野田政権はTPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加方針を決めたが、関税撤廃で打撃を受ける恐れがある国内農業の強化は不可欠。中でも、農家の規模拡大は競争力を高める上で必須の条件でもある。道内の農家は、規模拡大にどう向き合おうとしているのか。TPPに参加する、しないに関わらず農業の強化は避けて通れない。意欲的農家をどう後押ししていくのか、政策支援の再構築が求められている。
 
 規模拡大が連鎖的に進んでいくには、画一的な面積を保有する農家が固まっていては障害となってしまう。例えば、10㌶程度の農家が多数存在していれば、ある農家が離農してもその農地を買い取って20㌶に規模を拡大しようという意欲はなかなか湧かない。今まで苦労してやってきたのに、さらに借金をして農地を広げようということにはならないからだ。
 
 しかし、大規模農家と小規模農家が混在しているような地帯では、規模拡大は進みやすいという。小規模農家が農業を辞めても同じ地帯で耕作している大規模農家がその農地を買い取ってさらに規模拡大を進める傾向が強いためだ。
 
 大規模農家は、生産性や効率性を追い求めるマインドが強く、規模拡大に対する意欲が強いためだ。
 
 十勝や斜網(斜里・網走)などの畑作地帯では、大規模農家と小規模農家が混在しているため、小規模農家がリタイアした場合に大規模農家がその農地を吸収し規模拡大が進む好循環サイクルがあるという。
 
 道内の農業団体会長は、「畑作地帯で40~50㌶作っている農家では、70~80㌶に規模を拡大しても良いという農家がたくさんいる。コスト的に合うとか合わないと言ってもここまで拡大してきたら後には戻れないという意識も強いためだ。だから、離農する農家の農地を鵜の目鷹の目で見ている大規模農家もいる」と言う。
 
 水田地帯でも規模拡大は待ったなしの状況で進んでいる。空知管内や上川管内の水田地帯では団塊世代のリタイアや後継者難によって数年で離農する農家が多数出てくると見られている。
 
「北村では平均水田面積が19㌶、岩見沢でも13㌶になっているが、数年後には離農した農家の水田を買い取って30㌶や50㌶の水田農家が出てくるだろう」(道内農業団体の副会長)
 
 北海道農業は、畑作、酪農、稲作の主要3分野で階層分化が進んでおり、今後団塊世代のリタイアによって小規模農家の農地売却が進んでいけば、さらに階層分化が顕著になってくる見通しだ。
 
 北海道の農業者には規模拡大の意欲が強く、農業の競争力強化にも前向き。TPPに参加、不参加の前に農業の近未来像をはっきりさせた上で規模拡大を後押しする農政が求められる。



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