ミシュラン北海道2012年特別版で三つ星レストランに選ばれた「モリエール」(札幌市中央区宮ヶ丘)のオーナーシェフ、中道博氏(60)が25日、札幌市内で講演、「三つ星を貰って緊張している。三つ星獲得は料理人としての夢だった。夢を貰うことには責任が伴ってくる。これに報いたい」と語り、中道氏が料理の道に進むきっかけになったことや料理の原点について語った。(写真は、SATOグループのオープンセミナーで講演する中道博氏)
 
 中道氏の実父は、仏壇などに金箔や銀箔を貼り付ける職人だった。子供のころから父親の仕事を手伝う中で、職人の魂とも言えるものを身近に感じる環境にいたという。
 
 料理人を志したのは、室蘭栄高2年のとき。テレビで昭和の宮大工、西岡常一氏が法隆寺の改修を行う場面を見たことが大きなきっかけだったそう。西岡氏は、名前が知られなくても後世の大工が『昭和の法隆寺改修を行った大工は素晴らしい』と評価するような仕事をしたい、と語っていたようでこの場面が中道氏の父親から受け継いだ職人魂に火を付けた。「褒められるのではなく、素晴らしい料理を作る料理人として結果を出したい」と強く思うようになったと言う。
 
 中道氏は、フランスへの料理修行を終えて札幌に帰ってきた20代前半のときには、各界から注目され、褒め殺しにあったこともあった。その中でも、自分の料理は自分が編み出したものではなくフランスの技術を少し自分なりに昇華しただけでそんなに褒められるようなものではないと絶えず違和感を持っていたそうだ。
 
 30歳を過ぎて独立、「モリエール」を開店したが、汗水たらして仕事をしても結果が出ない限り仕事とは言えない、という思いを強く抱いていた。それでも料理店は人気で「それこそバラ色の客の入りだった」そう。
 
 オーナーシェフになって体得した哲学ともいえるものがあった。それは、「自分の器をいかに作るかということ。小さくても大きくても構わない。その器に知恵や能力を絶えず入れて行く。器からこぼれてくるものを受け止める受け皿はいらない。私は、受け皿となるような組織を作ったら知恵や思いは枯れていくと思っている。それよりも自分の器の中にポツリポツリと水滴が滴るように能力や技術や価値観を溜めていった方が良い」というものだった。
 
 ミシュラン北海道2012年特別版で評価されたことについて、「正直な話、三つ星に評価したミシュランは大英断だと思う。本来なら絶対にならない。三つ星の本場はもっと素晴らしい。北海道版はレストランの在り方について問題提起をしたのではないか。つまり、北海道は素材にポテンシャルがあるとミシュランは考えたのではないか。地元の素材を選ぶ目があるか、素材を生かす調理をしているかの2点でミシュランは三つ星をくれたのだと思う」と語った。
 
 中道氏は、自身の料理の原点はシャボン玉ホリデーのワンシーンにあるとも語った。「シャボン玉ホリデーで、ザ・ピーナッツが寝床に臥せっているハナ肇に“おかゆ”を持っていくシーンが毎回あった。ハナ肇が『いつもすまないねえ』といって食べる。私にはそれこそが料理の原点であると思えてならない」
 
 フランス料理の大御所として知られたアラン・ジャベルは、「真実の伝承されたフランス料理はフランスにはないと言っていた。伝承された真実のフランス料理は、イタリアの大家族のおばあさんが作る料理だと。私は、シャボン玉ホリデーの“おかゆ”と同じことではないかと思っている」
 
 ともあれ、三つ星獲得は、「本来のミシュランの評価とは違うが、それでも天にも昇る気持ちだ。これに報いていきたい」と結んだ。



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