「私の代で何とか小・中学校の児童・生徒に温かい給食を提供できるようにしたかった」ーー日高管内様似町の坂下一幸町長(73)は、歴代町長がやりたくでもできなかった学校給食事業にようやく道筋をつけた。厳密には学校給食とは言えない配食の一環だが、子どもたちは初めて食べる温かい昼食に目を輝かせている。(写真は、様似町の坂下一幸町長)
坂下町長は現在4期目。任期は10月までで、今度の町長選には出馬しないことを決めている。町長16年間の中で町民アンケートを取ると、いつも一番希望が多かったのが学校給食だった。財政力が脆弱な自治体の一つとして、町民の希望を理解していても、学校給食施設の建設費やそこで働く人たちの人件費を支出する財源は捻出できない。仮に造ったとしても毎年100人規模で人口が減少していく中、子どもたちの数も年々少なくなっていき、施設を維持していくことさえ難しくなるのは目に見えていた。
そんな中、町長は家庭の事情で自ら民間の配食サービスを受けることになった。おいしさとともに栄養やアレルギーのことにも配慮した配食サービスに、町長は感銘を受ける。「これを学校給食に活用できないか」ーー町長は即座に動き、指名型プロポーザルで参加を募った。結果、全道で配食事業を展開しているコープさっぽろ(本部・札幌市西区)が、様似型学校給食としてスクールランチを提供することになった。
配食の製造拠点は、コープフーズ(本社・石狩市)の帯広工場(帯広市)。1・5tのトラックに加温庫を積み込み、温かい状態を保って約2時間で様似町の小・中学校に届ける。8月24日の試食会では、温かいカレーが振る舞われ、いつも冷えたお弁当を持参している子どもたちは大はしゃぎ。厳密には学校給食法に定められた学校給食とは言えないが、温かい状態で子どもたちに提供できる食事は、歴代町長の悲願でもあった。
スクールランチ事業が正式に始まるのは、9月13日(月)。ごはん、汁物、おかずなど4品目が基本で、メニューは管理栄養士が監修、小学校低学年、高学年、中学生の3パターンをつくって約300食を提供する。月に一回程度は様似町産の原料を使用したメニューとし、10月には地元産秋サケを使うという。
スクールランチ事業をきっかけに同町は、コープさっぽろと包括連携協定も締結した。様似町には1985年にオープンした「コープ様似店」があるほか、これまでも災害時物資供給協定や高齢者見守り協定を締結しているが、今回は、さらにまちづくりを含めた包括的な連携協定になっている。
坂下町長は、「今後は高齢者向けの配食や特別養護老人ホームの食事の提供などにも、コープさっぽろと協働で取り組んでいきたい」と話す。また、コープさっぽろの大見英明理事長は、「食を通じて地域が豊かになり、町を誇る気持ちを育む一助になればと思う」と話した。
(写真は、包括連携協定締結式。左から坂下町長、コープさっぽろ大見英明理事長)