ーーとても良い構想ですね。道内の私立大学でそうした取り組みをするのは画期的ですね。
河西 北海道大学は全国区の大学でグローバルに活躍する人材を輩出しています。小樽商科大学は、アントレプレナーシップ専攻という創業者などを育てる取り組みで、若くて優秀な次の世代を担う経営者を育てることに注力されているようです。私たちは、創業や事業承継といったもっと地域に直結したことに対応していく役割が果たせるのではないかと考えています。そこを深掘りしていこうというわけです。
ーー札学院の創学の精神が発揮しやすい局面です。
河西 自分たちが生き残りやすいドメインを見つけて、そこでナンバーワンになる戦略です。マーケティングの世界では、これを弱者の戦略と呼んでいます。私たちは、北大とか北海学園大学のような強者ではないので、自分の得意な領域を見つけて、そこでナンバーワンになろうと思います。ナンバーワンのドメインをどんどん増やして持続可能な大学をつくっていこうというのが戦略です。そうは言っても、まだまだできていませんから、もっと頑張らないと生き残れない。
エコシステムの一環として、学生ビジネスプランコンテストに高校生部門を設ける予定です。最初から全道の高校生を対象にするのは難しいので、まず道央圏の高校に声を掛け、高校生の創業意欲を高めていきたい。以前から、日本政策金融公庫は高校ビジネスプランコンテストの全国大会を開催しています。人材確保も含めて、当大学と政策金融公庫が連携しながら、高校生を対象にビジネスを始めたい人を発掘することを今年度から進めます。
ーー今年のいつ頃を予定されていますか。
河西 12月に高校生、2月に大学生のビジネスプランコンテスト開催を計画しています。経済経営学部は創業、事業承継を考える若い人たちの受け皿になる学部ですが、他学部でも少しずつエコシステムをつくり上げていきます。例えば、心理学部が関わるものとして、2017年に誕生した公認心理師という新しい国家資格があります。この国家資格を受験するには本学臨床心理学研究科のような大学院を修了するか、もしくは社会福祉法人などの医療福祉機関での2年以上の実務経験が要件になります。当大学は社会福祉法人楡の会(札幌市厚別区)と連携協定を結んで、その社会福祉法人で働きながら受験資格を得られる道を拓きました。
本学の学生の中にも大学院に行って資格を得るというのは、経済的にも負担が重いし、大学院の入試も受けないといけないので結構大変です。そういう学生たちは、この社会福祉法人に就職をして、何年か経ったら受験資格を得られるようになります。楡の会にとっても優秀な人材確保に繋がります。現代人は心の健康が重要視されているので、実際に問題解決できる専門職というのをつくり上げていくエコシステムを動かすことができるのではないか。
法学部、人文学部に関してはまちづくり、地域づくりというキーワードでエコシステムができないか、今年度中に動きたいと思っています。そうすることで教育機関である当大学は、人材を育てていく大きな役割を果たしていきたい。大学の従来のビジネスモデルに新しい価値を組み込んで生き残りを図っていこうと考えています。
ーー高大連携については。
河西 江別高校と札幌東商業高校と連携協定を結んでおり、定期的に両校の高校生が本学に来て簿記を学習したり、ICT系、英語の授業を受けたりしています。そういった従来型の高大連携を進める一方、高校と大学という関係ではなく、将来自分でビジネスをやりたいというテーマで高大連携をしていこうと思います。
当大学の教育リソースに合う高校生を集めて、どこの高校かは問わず様々な教育機会を提供したい。DX(デジタルトランスフォーメーション)のもとで、文科省も補助金を出してリモート授業を後押ししていますから、そういう意識を持った高校生に本学のリモート授業のシステムを提供、遠隔で起業、事業承継、経営のことを学べる機会をつくりたい。もっと深く勉強したいと思った若者が本学の経済経営学部に入学してくれるといいですね。
ーー本日は、ありがとうございました。