9月6日の北海道胆振東部地震でホテルや旅館で大量キャンセルが発生するなど大きな影響を受けた観光業界。札幌も例外ではないが、「ふっこう割」などによって全道的に徐々に持ち直しつつある。観光は北海道経済の牽引役であり、とりわけ札幌観光は北海道全体の底上げに欠かせない立ち位置にある。そこで、震災から得た教訓や今後の札幌観光の課題などについて一般社団法人札幌観光協会の柴田龍会長(61)に聞いた。
【しばた・りゅう】1957年1月生まれ、函館市出身。中央大学卒業後、1981年4月北洋相互銀行(現北洋銀行)入行。取締役、常務を経て2010年6月副頭取。11年6月代表取締役副頭取、18年4月取締役副会長。16年11月から札幌商工会議所副会頭、18年6月29日付で札幌観光協会会長就任。出身地の「はこだて観光大使」も務めている。

 ーー9月6日に発生した北海道胆振東部地震の翌日に開幕が予定されていたオータムフェストは、1週間遅れのスタートとなりました。結果として開催は成功で、復興のシンボル的な意義も果たしました。

 柴田 北海道は災害が少ないと言われていた中で、震度7の大地震とそれに続くブラックアウトは大きなショックであり、被害が大きいことも衝撃でした。しかし、ここで踏ん張らないといけないという思いもありました。震災翌日に開幕予定だったオータムフェストについては、協会内部や札幌市も含めて協議をしていましたが、私自身としては、延期はやむを得ないにしても、『やらなければいけない』と思いました。それには、二つの要件をクリアしなければなりませんでした。一つは電力の問題。あの時は、まだ2割の節電や計画停電の予定もありました。既存電力を使わず自家発電機を使って実施することが必要でした。

 もう一つは、震災被害の大きかった厚真町など周辺地域はまだ被災者の捜索中でしたから、配慮をしつつ元気を出すような活動をしていかなければいけないという点です。これらの要件を満たした中で実施しましたが、結果として(復興、復旧の)先鞭を切ったという意味でも、開催は良かったと思います。震災復興の大義をしっかり打ち出せました。

 ーーたくさんの人が足を運びました。

 柴田 札幌をはじめ地域の人たちには、様々な思いがあったと思いますが、昨年が203万人の来場者で今年は172万人が来場しました。インバウンドは、あの時点でほとんどいなかった上、本州からの観光客もかなり減っていました。そうした中で、昨年の8割以上を確保できました。来場者も復興を応援したいという気持ちが強かったのでしょう。初めて来られた方も多かったようです。

 ーー震災でホテルのキャンセルが大量に発生しました。徐々に戻りつつありますが、観光被害額が290億円と道がまとめています。

 柴田 ホテルのキャンセルと旅行客が飲食店やお土産店で消費する部分もありますから、実態の被害はもっと大きいと思います。観光客の挽回を図るためには、SNSなどいろんな方法を使って情報発信していくことが必要です。協会だけの問題ではなく地域、行政も含めて官民一体で様々なチャンネルを使って発信していきたいと思います。北海道は元気だということが浸透し始めており、早期に回復しつつあるのはそうした効果が表れてきたということでしょう。もちろん“ふっこう割”などの効果も大きい。



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