ーー北海道の場合、首都圏の大学に行く人たちもいます。首都圏の大学とも競争しなければならない。

 河西 人口動態と似ていて、まず北海道の中で見ると18歳人口を一次的に受け止めるのが札幌圏。札幌圏の大学が、一定程度のダム機能の役割を果たしていますが、首都圏の大学で学びたいという人は首都圏に出て行きます。しかし、20年4月は、入学希望者の傾向が変わりました。それまでは東京の大学は、どんどん全国から18歳の若い人を集めていました。そのことが地方の疲弊を招いていると指摘され、地方創生のためにそれぞれの地域で頑張ってもらわないといけないということになり、文科省は23区内の大学の定員管理を厳格に行うように要請したのです。
 その結果、東京の私立大学に行こうと思っていた人たちが、大学のランクを少し下げて受験する傾向になりました。それに加えて20年4月は大学センター入試の最終年度のため、浪人したくないという意向も働いて、受験校を保守的に考えるようになりました。そのために先ほど述べたように当大学も入学者が増えました。新札幌キャンパスを開設するというアナウンスもしていたので、その効果もありました。

 ーー21年度から新しく経済・経営学部が設置されました。学生募集の状況はどうでしたか。

 河西 非常に好調でした。当大学は、今年4月1日に誕生した経済経営学部(昨年度までは経済学部と経営学部)、法学部、人文学部、心理学の4学部ですが、その中で定員を確保してるのが経済経営学部です。合格基準を下げたのではなく、昨年の経済学部、経営学部の入試基準よりもむしろ上げました。経済経営学部の経済学科と経営学科が各150人の定員300人ですが、実際に経済学科は165人、経営学科は172人になりました。文科省は、入学者数を定員通りきちんと取るように各大学に要請しており、少なすぎても多すぎてもいけない。多すぎると補助金がカットされる場合もあります。教員数を柔軟に増やせないので定員よりも多くなると教育の質が落ちかねないからです。本学の経済経営学部は少し多めに取っていますが、取り過ぎということはありません。

 ーーあらためて新札幌キャンパス開設の目的を聞かせてください。

 河西 新札幌と江別のキャンパスの一番大きな違いは、交通の利便性です。新札幌は交通の要衝で、地下鉄、JR、バスもあってアクセスが良い。駅から歩いて2~3分ですから非常に通学しやすい。そうした学生募集の優位性があるほか、学内だけで大学教育を完結させるのではなく、地域の企業や行政、住民と一緒になって教育をつくり上げていくことからすると、新札幌の立地は非常にやりやすい。学生たちと教員が地域社会に出て、地域の様々な課題を専門分野の学問で解決していくプロジェクト・ベース・ラーニング(PBL)を実践する場として育成していく考えです。
 もちろん、江別のキャンパスでも地域の課題に向き合うPBLを行っています。例えば、つしま医療福祉グループが札幌盲学校跡に高齢者と地域の方々が共生する江別市生涯活躍のまち(CCRC)をつくりましたが、そこにも本学の教員と学生が関わっています。新札幌では、地域の関わりをもう少し広域的に考えて、全道を対象にしたいと思っています。

 ーー地域経済のエコシステムを構築することも目的ですね。

 河西 本学は今年3月に日本政策金融公庫、北海道中小企業総合支援センターと連携協定を締結、ビジネスプランコンテストも開催しました。創業や事業承継といった地域経済の課題と若い人たちをマッチングさせ、エコシステムという一つの生態系をつくります。当大学が、全道から志と意欲を持った若い人たちを集めて鍛え、大学を卒業したら創業や地方の有望な事業の後継者になる人材を全道に輩出していくことを考えています。
 こうした経済のエコシステムができないと、北海道の中で自律的に経済が回っていきません。本州から大型資本が入ってきて雇用が生まれることに頼っていてはいけない。そこを少しでも変えられたら良いのではないかと思います。私たちは、若い人たちを集めて教育できるポジションにあります。創業時に資金供給することが得意なのは日本政策金融公庫ですし、創業に関わるノウハウを持っているのは北海道中小企業総合支援センターです。また、道銀とも包括連携協定を結んでいるので、事業承継では道銀に繋ぐことも可能になります。道内で創業や事業承継、第2創業のようなことが、ある程度完結できるエコシステムがつくれるのではないかと思います。



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