衆院5区の補欠選挙は、事前の報道各社の予測通り、自民党の町村信孝氏(66)が、民主党中前茂之氏(38)を3万票の差をつけて10回目の小選挙区当選を決めた。
投票が終わった午後8時には既に当確が報じられ、10分後には町村氏も選挙事務所に顔を出し当選の喜びを語るなど、1年前の8月に落選した時と事務所内の空気は天と地ほどの差があった。


しかし、当選した町村氏には上気した様子はなかった。淡々と語る勝利インタビュー。民主党の政治とカネの問題、スキャンダルを隠そうという体質、政権交代に託した国民の期待はずれ――どれも町村氏を当選に導いた原因だが、冷静な客観的分析は政治評論家に任せておけば良い。
町村氏に投票した有権者が聞きたいのは、ニュー町村の率直な気持ちだ。有権者の心に響くような感情の揺らぎを町村氏自身の肉声で伝えて欲しいのである。

インタビューでは、北海道のことについて熱心に語っていたのは印象的だった。農業の戸別所得補償は北海道農業を衰退に導くと述べたり、公共事業の4割削減、そして来年度はさらにシーリングで1割削減になれば北海道は短期的に壊滅的な打撃を与えるなど、北海道経済の浮揚策に言及したことは、確かにこれまでの町村カラーが一皮向けたニュー町村の片鱗のように感じられた。
文部科学相や外相、官房長官と政権中枢を歩いてきた町村氏にとって今回は負けるはずのない戦いだった。自民党という野党の一員であっても政治家生活27年間の実績と蓄積は他候補を圧倒している。輝かしい経歴から逆算していけば、今回はダブルスコアをつけても良かったはずだ。民主党スキャンダルの発火点とも位置づけられている5区なのに、3万票差は磐石な基盤と言えるのだろうか。
3万票をどう読むか、勝った自民党以上に、民主党は勝ったとも言えるのかもしれない。
(写真は、10月24日の5区補選で小選挙区議席を奪還した町村氏)

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