昨年12月14日に発生した札幌市営地下鉄南北線「北34条駅」構内での地下水漏水。地下鉄「麻生駅」と「北24条駅」の間が丸1日止まるなど、利用客の混乱も引き起こした。漏水の原因は現在調査中だが、地下鉄構内の老朽化ではない別の要因も取りざたされている。ともあれ、漏水を止めることができたのは、加圧注入止水剤と言われる特殊な薬剤だった。(写真は、地下水漏水で一時使用できなくなった札幌市営地下鉄南北線「北34条駅」=2020年12月16日午後撮影)

 昨年12月14日の未明に発生した「北34条駅」構内での地下水漏水は、一時は上下線のホームを繋ぐ地下連絡通路の高さ2・7mの天井まで浸水、地下鉄走行路面の一部も浸水するなどした。漏水した地下水の量は毎分2600ℓあり、駅に備え付けられたポンプでは間に合わず、原動機式排水ポンプで応急対応したが、原動機はガソリンを使用するものだったため、一時は駅構内に排気ガスが充満。急遽、電動式のポンプに切り替えるなど混乱した。

 地下通路の水位が低下して分かったのは、通路のコンクリート壁(厚さ70㎝)に入った縦15㎝、横25㎝のひび割れ。そこから地下水が漏水していたため、札幌市交通局はこうしたコンクリート構造物からの漏水を止める薬剤(日本バンデックス=本社・東京都杉並区=の「バンデックスフレキシン」)を用意した。低粘性、速硬性の止水剤を漏水箇所に高圧で注入、水と反応することで高弾性の樹脂を形成して止水する方法。トンネルやダム、貯水槽などの止水に利用されている。

 ところが、この薬剤は特殊なものだけに道内には在庫が少なく、「北34条駅」の漏水を止めるのに必要な10セットのうち大半を本州から取り寄せなければならなかった。しかも、液体薬剤のために航空便では運べなかったため、トラック便で陸送せざるを得ず、取り寄せるのにほぼ2日間を要し、止水作業を始めたのは16日になってから。17日にようやく止水作業が完了した。

「北24条駅」から「麻生駅」にかけては、元々地下水の多い地域のため、1978年に竣工したこの間の地下鉄工事では、地下に鉄筋コンクリート製の連続地中壁を作って地下水の流入を防ぐ工法が採用されている。2018年9月の胆振東部地震では、地下鉄の走る上の道路、「西4丁目線」の液状化現象が起きて道路陥没などがあったが、地下鉄駅などへの地下水漏水はなかった。

 市交通局では、恒久的な止水対策を大手ゼネコンと検討するとともに原因についても調査中。ただ、今回の地下水漏水の原因については、コンクリート壁の老朽化ではないという見方も出ている。ちなみに、この工区を担当した中堅ゼネコンからは、今回の地下水漏水についての問い合わせはないという。
※2021年2月26日記事一部修正しました。



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