マチの新陳代謝は、建物の解体・新築が大きな要素を占める。見慣れた建物が解体され、新しい建物が建設され、マチは生まれ変わっていく。札幌には今、中心部にも郊外にも数多くの新陳代謝の姿がある。札幌の今を記録する『札幌の今、解体ノート』の8回目は、札幌市西区西町北11丁目1—1の「ヴィクトリアステーション手稲東店」。(写真は、解体がほぼ終わった「ヴィクトリアステーション手稲東店」)

 北5条・手稲通沿いにあるファミリーレストラン「ヴィクトリアステーション手稲東店」。店舗の住所地は西町で、手稲は宮の沢を越えてさらに西に進まなければならない。それにもかかわらず「手稲」の冠を付けたのは、当時の旧町名が「手稲東」だったため。新町名になってからもそのまま踏襲したのは、運営会社の思いが込められていたのかもしれない。
 
 この店舗の明確なオープン時期は不詳だが、1983年頃に当時の運営会社だった北海道資本のヴィクトリアステーションがオープンさせたようだ。しかし、99年にダイエー系列の中内インターナショナル(東京都港区)がその会社を買収。その後、2002年にダイエー系列を離れてゼンショーホールディングス(本社・東京都港区)の子会社、ビッグボーイジャパン(同・同)が店舗運営を引き継いだ。土地は、信託期間を経て、2009年に道内在住の個人2人に所有権が移転していた。
 運営主体は、時代とともに変わっていったが昭和、平成、令和と店舗は継続、ファミリーレストランとして40年近い歴史を刻んできた。そして、遂に幕を閉じたのは今年の4月25日だった。
 
 土地は、閉店後の21年6月、エイビーシー建設(本社・札幌市豊平区)が取得。解体工事は6月14日から始まっており、現在はほぼ解体が終了している。解体はモエレ産業(札幌市北区)。隣接する「ツルハドラッグ西町北店」と「ヴィクトリアステーション」の2つの大きなポールサインは、北5条・手稲通の遠くからでも見ることができた。町に溶け込んでいた風景が間もなく消え、次の主役にバトンタッチする。
※2021年7月28日、読者から複数の指摘をいただき記事一部を修正しました。旧町名のくだりです。


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