マチの新陳代謝は、建物の解体・新築が大きな要素を占める。見慣れた建物が解体され、新しい建物が建設され、マチは生まれ変わっていく。札幌には今、中心部にも郊外にも数多くの新陳代謝の姿がある。札幌の今を記録する『札幌の今、解体ノート』の4回目は、札幌市北区北31条西6丁目の「ラドン風呂 渥美湯」。(写真は、札幌市北区北31条西6丁目の「ラドン風呂 渥美湯」解体現場)

 こんなところに国の機関が、と思うような場所にあるのが、札幌法務局北出張所と札幌国税局札幌北税務署。銭湯「渥美湯」は、札幌法務局北出張所の正面玄関前の道路を挟んだ向かい側にあった。営業開始は1970年というから、地下鉄南北線はまだ走っておらず、この界隈も今では想像できないほどの風景が広がっていたのだろう。近くには、「セイコーマート」の原点となった「萩中商店」(北30条西8丁目)が今も「セイコーマートはぎなか」として営業を続けている。こちらは71年からスタートした。

「渥美湯」は、店主が代替わりをして営業を続けてきたが、今年3月31日に閉湯となった。理由は設備老朽化と店主の高齢化。「ラドン風呂」の老舗銭湯として親しまれたが、51年で役割を終えた。その建物は、今や消滅寸前。銭湯を彷彿させる痕跡はなく、唯一『渥美湯』の看板だけが寂し気に立つ。この看板も早晩取り外され、土地は「渥美湯」の歴史を吸い込んで更地になっていく。

 この土地は、隣接の土地とともに今年5月、ミサワホーム北海道(本社・札幌市白石区)が取得した。広さは約300坪で、マンション建設が予定されているという。かつては、飛行場や牧場があったというこの界隈は、住宅地に変貌した。時代と共に歩んできた「渥美湯」も消え住宅地に変わる。古きを捨て、新しきを取り入れる土地は時に冷淡でもある。


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