ーー水上さんは、これまで菓子博を見る側でしたが、今回は、実行委員長として初めて裏方役になりますね。
水上 私たちは、伊勢の時も、ただただ楽しみにして、見学していました。まさか、開催側になるとは、思ってもいなかった。開催側になるつもりで見に行っていたら、違っていたと思いますが、予備知識が全くない中からのスタートでした。今までは、規模が大きかったので、イベント会社が企画していました。大阪のそのイベント会社は、過去30数年間にわたって菓子博を手掛けていました。丸投げとまとまではいかないにしても、開催地のお菓子屋さんが、一から百まですべて関わることはありませんでした。
しかし、今回は違います。テントはどこから借りるのか、電気はどうしたらいいのか、設営を取りまとめるのは誰か、ゴミはどう処理したら良いのかなど、ほぼすべて私たちが最初から対応しています。一部は、イベント会社にお願いしていますが、全体のプロデュースは、私たちが行っています。正直言って、ここまで大変だとは思いませんでした。ただ、今回の菓子博開催がパッケージ化されれば、次の開催地は、比較的楽になるかもしれません。
ーーJC理事長を経験されるなど、イベント開催の体験も今回の菓子博開催に生かされているのでは。
水上 旭川の代表的イベントの一つになっている「北の恵み 食べマルシェ」もゼロから一にするのに、大手広告代理店の力を借りています。「食べマルシェ」は、初回の組み立てを終えてから、次回以降は、地元の代理店が担うようになりました。それに比べて、菓子博は、ゼロからの組み立てですから大変です。ただ、JCに参加していたことが励みになりました。身を削ってでも、一緒にやろうと言ってくれる仲間がいるからです。JC仲間たちは、損得関係なく取り組んでくれます。
ーー実行委員長に就任した経緯は。
水上 これまでは、地元の開催県などにある菓子工業組合の理事長が実行委員長をしていました。挨拶やPRのための役割で、実務には関わっていませんでした。今回は、旭川が会場ということで、旭川菓子商工業組合の組合長だった私が、実行委員長に就くことになりました。実務も手掛ける初めての実行委員長になります。
ーー水上さんの経歴を聞かせてください。
水上 現在、58歳ですが、31歳の時に家業を継ぎました。旭川工業高等専門学校卒業後に京セラに入社して、長野県の工場でカメラの製造に携わっていました。その後、鹿児島、北見の工場に勤務して、積層チップコンデンサーなど電子部品の生産技術を担当しました。家業を継ぐ決断をしたのは、父の他界です。次男ですが、継げるのは、私しかいなかったためです。
先代が手掛けた商品の中で、これまで100個売れていたものを、1000個売れるように生産、販売面の改革を行ってきました。美深町で100年続いた母方の親戚のお菓子屋さんから、トップ商品だったあんドーナツを承継、これまで手づくりで1日に500個しかつくれなかったものを、1日に1万5000個つくれるように効率化も進めてきました。ただ、私自身が、一からつくり上げたお菓子は、まだありません。味やデザインを変えたり、つくり方を変えたりして、生産量を何倍にも増やすのが仕事でした。
ーー水上さんにとって、お菓子づくりの魅力とは何ですか。
水上 京セラ時代に担当していた電子部品の生産技術の勘どころは、100万分の1、1000万分の1に不良品を抑えるための工夫でしたが、お菓子づくりは、大前提としておいしいか、おいしくないかの見極めが必要です。お菓子の不良品を出さないことにかけては、大手のお菓子屋さんに負けないくらいですが、おいしいか、おいしくないかは、味覚にかかわる感覚的なものです。そこが、一番難しいところですが、一番魅力的でもあります。ただ、おいしいだけでは売れる時代ではありません。デザイン、販売先、生産力など、総合力が求められます。だからこそ、お菓子屋さんは、奥深くて面白いと思っています。
ーー本日はありがとうございました。
※入場料は、前売り券(2025年4月27日~同年5月29日まで販売)大人1200円、中学・高校生1000円、小学生600円、当日券大人1500円、中学・高校生1200円、小学生800円。主な販売場所は、セブン-イレブン、ローソン、セイコーマート、道の駅あさひかわ、北海道どさんこプラザ札幌店、北海道内各商工会議所、北海道内の各菓子店。