和・洋菓子、パン製造販売のもりもと(本社・千歳市)は、2019年の70周年を機に「千歳本店」の建て替えを行うなど新たな歴史のスタートを切った。地域に根差した日常的な菓子やパンを生産してきた同社にとって、70周年の足跡は地域とともに発展してきた歴史そのものだ。創業当初から素材にこだわり、道産素材の活用を重視してきたのも同社のアイデンティティーを示している。70周年の振り返りとポスト70年に向けた同社の経営への向き合い方について森本真司社長(46)にインタビューした。(写真は、インタビューに応えるもりもと・森本真司社長)

 ーー2019年は70周年でしたが、振り返ってどんな1年でしたか。

 森本 昨年の70周年に際してスローガンとステートメントを作り、従業員全員に配りました。会社の理念をあらためてまとめたものですが、作り手も売り手もチャレンジして美味しいものを作りたいという気持ちでずっと続けてきたのが当社の歴史。それを大事にして、これから先もその精神で新しいものをどんどん生み出していこうと認(したた)めたものです。

 商品開発を繰り返していますしお客さまに喜んでいただけたというような話は、なかなか振り返って言葉にはしてこなかった。今回、スローガンとステートメントを作ったことで全社的に当社の立ち位置を再確認できました。「もりもと」の味は、こういう味だ、こうあるべきだということに少しでもレベルがあげられればいいかなと思って作りましたが、本当に作って良かったと思います。

 ーーこれまでの周年行事の時にも歩みを振り返るようなことをしてきたのでしょうか。

 森本 60周年の時には、こうしたステートメントは作らず、全社挙げてお客さまへの感謝セールを実施しました。セールは初めてということではありませんでしたが、全社で大々的にやったのはあの時が最初でした。3日間、10%引きのセールでした。
また、その時に工場祭も初めて実施しました。工場祭はその後、毎年開催するほど定着しています。周年、特に10年に1回の周年祭は会社にとってすごく大事な節目。周年行事で新しく取り組むことが、次の10年に繋がっていくようになれば良いと思います。

 ーー社長就任から2年経ちました。70周年プロジェクトの目玉が千歳本店(千歳市千代田町4丁目)の建て替えでしたが、あらためて新本店のコンセプトを聞かせてください。

 森本 17年9月に社長に就任しましたが、その時から70周年をどう迎えるかを考えていました。会社を成長させていくことを表現する場になれば良いとそのころから思っていました。
 本店は、駅からも近く恵まれた立地。当社の小売事業がこの場所で始まったのは、1949年の創業から10年ぐらい経った時です。当時はまだ千歳駅ができたばかりのころですが、祖父母は「この場所は絶対に良い場所になる」と当時から言っていたそうです。それから60年以上、この場所で営業を続けてきて「千歳のもりもとさん」と親しまれるようになりました。
 当社は歴史的に和菓子、洋菓子、パンが事業部に分かれていて職人を専属で育てるのが強みです。そうした職人が、出来たての商品を目の前のお客さまに提供することが原点です。建て替えをしても、イートインで和・洋菓子、パンの四季折々の商品を食べていただこうと思いました。北海道にこだわって続けてきたことをきちんと表現できる新本店にすることが大事だと思いました。

 最初は、本店はこうあるべきだとかフラッグシップの店舗など、格好の良い言葉を追い掛けていました。でも当社の一番の本質は何かと言ったら、和・洋菓子やパンを近所の人たちが子どもさんを連れて日常の一コマのように買ってくれること。さらに祝いごとや手土産などいろいろなシーンでお菓子は使われます。そうしたことをポスト70年に向けて表現してもらえる設計者ということで東京の設計会社を紹介してもらいました。「これが北海道、千歳のもりもとだ」というくらい、当社らしさが出ているお店だと思います。



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