(写真は、排熱投入型蒸気焚吸収式冷凍機)

 新さっぽろエネルギーセンターの特徴は、AIを使ったCEMS(地域エネルギーマネジメントシステム)によって、I街区全体に効率よくエネルギーを供給、省エネを実践しているところ。CEMSは、各施設でのエネルギー使用実績のほか気象情報など、さまざまなデータをAIで分析して、エネルギー使用量を予測する。その予測をもとに、最適なエネルギー源を選択し、効率よく運転することでエネルギーロスを最小限にすることができる。空調設定温度など、これまで人の手でコントロールしてきた省エネを、CEMSのシステムで自動化することができるのも特徴となっている。

 I街区の電力供給量が逼迫した場合には、各施設にメールなどのプッシュ通知で節電を要請、省エネ行動を促すことに加え、エネルギーセンターでの効率の低い運転を検知すると、その要因をAIで分析して機器の設定値を変更するなど、システムの効率的な運転を行うことができるようにもなっている。ガスコージェネレーションシステムとCEMSの活用によって、従来の個別熱源システムと比較するとCO2排出量を35%も削減することが可能となる。

 エネルギーセンターと各施設を結ぶ熱導管やガス管は、耐震性、耐久性に優れたものを使用しており、災害時にもガスコージェネレーションシステムによる発電が継続可能となっている。大規模停電時でも、電力は約60%、熱は通常時とほぼ変わらない量を供給することができ、照明や給湯、暖房が使える。

(写真は、中央監視室)

 エネルギーセンターは、虻田郡豊浦町のブタ糞尿由来バイオガス発電プラントの発電状況と連携、再エネを最大限かつ効率的に運用する実証実験も行っている。再エネ電源の余剰時にはコージェネレーションシステムの発電出力を減少させ、余剰電力によって地中熱ヒートポンプで温水を製造、貯湯槽で蓄熱する。また、再エネ電源の不足時には、コージェネレーションシステムの発電出力を増加させ、同時に発生する発電発熱を貯湯槽に蓄熱する仕組みにしている。「将来的には、ほかの地域とも連携しながら、再生可能エネルギーの普及拡大に貢献していきたい」(担当者)としている。

 各種機械の運転の状態や、各種機械がどういった設定で動いているのかを監視する中央監視室は、平日の日中は3人体制、夜間と休日は1人体制で対応、24時間365日、エネルギーの供給状態を監視している。北ガス本社にも同じ画面があり、そこからでも遠隔監視できるシステムとなっている。新さっぽろエネルギーセンターは、I街区にエネルギーを供給するだけではなく、省エネ化、脱炭素化、地域レジリエンス強化に対応できる「未来のまちのエネルギーモデル」と位置付けられている。

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