(写真は、「椿サロン札幌本店」の店内)
長谷川 文化をつくるためには、アナログだけど当たり前のことを続けていくしかない。その当たり前のことが、今はできない時代になっています。この店にある椅子やテーブルは木と革を中心にできており、どんどん古くなっていきますが、10年経っても何も変わらないようにしたい。コーヒーも自家焙煎して、コーヒーカップやスプーンも自分でデザインしたものを使っています。こうした細かいことの繰り返しと積み重ねで、ここだけの空気感をつくっていくのが僕の役割です。その中から「北海道ほっとけーき」や「椿さんど」も生まれてきたのです。
ーー北海道の素材だけを使ったこだわりの逸品が「北海道ほっとけーき」ということですね。
長谷川 「北海道ほっとけーき」は、完全無添加の北海道産原材料のみで作ったパンケーキです。東京でたくさんのパンケーキを食べ歩いている人たちを招いて試食会をすると、「こんなの初めて食べた」というコメントが多く寄せられます。有名ホテルや行列ができる店のパンケーキには、ほとんど添加物が入っています。「北海道ほっとけーき」は、小麦粉と卵、てんさい糖、塩しか使っていません。
ーー食品添加物が一切入っていない。
長谷川 この素材を使って超アナログ的にゆっくりと一枚ずつ手で焼き上げたものが「北海道ほっとけーき」で、火を通したぎりぎりのレア感とぷるぷるの食感が最大の特徴です。
ーー開発にどれくらいかかりましたか。
長谷川 元々、「ほっとけーき」は作っていましたが、それを無添加のオール北海道産にするために1年くらいかかりました。どうしても一つだけオーストラリア産の副原料を使わざるを得なかったのですが、北海道産の「浮き粉」という和菓子で使う澱粉が見つかって、ようやくオール北海道産の無添加パンケーキを完成させることができました。
北海道産の食材で本物を作り、それを表現して文化をつくっていくことが、「椿サロン」の使命のような気がしています。本物の「北海道ほっとけーき」をできるだけ多くの人に食べてもらい、文化を感じ取ってもらいたいですね。
ーー本物の価値を知ってもらいたいと。
長谷川 本物の味を知ってもらって、本物を求めるようになってもらいたい。「北海道ほっとけーき」は焼いた後にすぐに食べないとぷるぷるの食感が消えてしまいます。そういう超繊細な食べ物なので、焼き上がったら店員さんたちも走ってお客さまのところに持っていきます。お客さまもそれがわかっているので、とにかく早く食べる。それが、「北海道ほっとけーき」です。
この「北海道ほっとけーき」の生地を急速冷凍して味わいを凝縮させ、少しレアで絹ごしの食感を出し、生クリームを使って北海道産フルーツをサンドしたのが「椿さんど」です。それをテイクアウト専門店「椿さんど」で展開しており、現在は「円山本店」と「地下街ポールタウン」(いずれも札幌市中央区)の2店舗があります。