【テーマインタビュー】ニセコは新型コロナをどう乗り越える~ニセコリアルエステート代表取締役ベン・カーさん

ピックアップ・リアル

 ーー2001年に起きたアメリカ同時多発テロ(9・11)の影響でオーストラリアからのスキー客が減りましたね。

 カー もともとオーストラリア人のうち年間3万人くらいが海外にスキーに行っていましたが、彼らの主な行き先はアメリカやカナダでした。しかし、9・11によってアメリカやカナダではなく『ニセコに行ってみよう』ということになったのです。1回でもニセコに来ればニセコの魅力が分かってもらえます。アメリカやカナダと比べて雪質は抜群だし時差もありません。食べ物も美味しく温泉もあって治安も良いなどすべての条件が揃っています。
 ニセコに来たオーストラリア人たちはニセコが好きになり、そこからスキー客の入り込みと不動産購入が急速に伸びていきました。最初の頃は、『なんでこんなに安いの』と驚いていました。外国人の目線なら10倍、場所によっては100倍の価格が付いても不思議ではなかったようです。このギャップも外国人不動産投資が増えていった理由の一つです。

 ーー2011年3月11日には東日本大震災がありました。その影響はどうでしたか。

 カー オーストラリア人は福島の原子力発電の事故で放射線の問題を心配して、その年の冬はニセコ以外で過ごす動きが増えました。オーストラリア人は毎年5~6月頃にその年のスキーシーズンの予約を入れるのが通例です。3・11が起こり予約を入れる段階でオーストラリア人たちは、アメリカやカナダのスキーリゾートに予約を入れるようになったのです。
 代わって香港、シンガポール、マレーシアの人たちが9~10月頃になってニセコは放射線の問題がないことを知り、予約を入れるようになりました。いつもはオーストラリア人でいっぱいのため予約を入れにくいニセコでしたが、その年はアジアからのスキー観光の予約が取りやすかったのです。
 そうすると今度は彼らが『ニセコはいいね』ということになっていきました。次のシーズンからは、オーストラリア人だけでなくアジアの人たちもどんどんニセコに来るようになった。徐々にオーストラリアのスキー客が減り、アジアからのスキー客が増えていきました。

 現在、ニセコの不動産を購入する90数%は外国人ですが、彼らは自分たちで冬と夏の1~2週間利用して一部の期間を友人たちに貸し、他の期間は管理会社に委託して利用客を募り収入を得る方式です。希望するのは2~3%の利回り。背伸びしないライフスタイルの一環としての投資なので、高い利回りを求めない購入者が多いですね。
 当社のセールストークは、『高いリターンを求めるのならニセコで買わない方がいいですよ』というもの。自分で所有して自分で楽しむことが購入者のステータス。リーマンショック後は不動産投資のスタンスも多少厳しくなりましたが、2~3%の利回りがあれば購入してくれます。

 ニセコへの不動産投資の99%を占める外国人は5億円にしても8億円にしてもオールキャッシュで購入します。リーマンショックの時には外国人から『売りたい』という相談が多くありました。でも、『半額でしか売れない』と言うと『それでは売らないことにしよう』と大半がそのまま所有を続けました。中には、『半額でもいいから売ってほしい』と言う人もいましたが、それは2、3軒くらい。数百軒に動きはありませんでした。
 実はニセコの不動産価格は今もカナダ、ヨーロッパのスキーリゾートと比べて高くありません。香港の不動産よりも安いのです。海外のリゾートはキャッシュの他にローンを組んで購入するケースもあって、価格が吊り上がっていきます。ニセコではローンを組んで購入するケースが少ないので価格上昇が抑えられている面があります。

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