新型コロナウイルスの影響は全国の観光地を震撼させている。北海道ニセコも例外ではなくホテルやレストランなどは開店休業状態が続く。世界のスキーリゾートに向けて外国資本の投資が続くニセコはこの危機をどう乗り越えるのかーー現地の声を聞いた。3回目は、ニセコ地区を通年型観光地に導くキッカケをつくった倶知安町字山田のNAC(ニセコアドベンチャセンター)代表取締役ロス・フィンドレーさん(55)。(写真は、ロス・フィンドレーさん)

 ロス・フィンドレーさんは、1964年オーストラリアのメルボルン生まれ。キャンベラ大学でスポーツ科学を専攻。卒業後はアメリカやスイスでスキーのインストラクターを経験。89年に札幌のスキー学校のインストラクターになり、ニセコのパウダースノーに魅了されて92年倶知安に移住。建設会社に勤務しながらスキーのインストラクターを続け、94年にNACを設立した。

 冬のスキー観光しかなかったニセコ地区に、ラフティングなど夏の体験観光を加え通年型観光地に導いた立役者的な存在。観光庁から「通年型アウトドア体験観光」の分野で観光カリスマにも選ばれている。ニセコ地区に移り住んで28年、ニセコの変貌を実体験してきたロス・フィンドレーさんは、新型コロナであえぐニセコの現状とこれからをどう考えているのか。

 ーーリーマンショックや東日本大震災などニセコは危機を乗り越えてきたと思います。今回の事態をどう受け止めていますか。

 ロス こんなことは経験したことがありません。長引くと観光業がみんな潰れてしまう。クローズしてオープンできるまで待つしかないのではないか。ビジネスを止めてスタッフがみんな解雇されたら、次のオープンの際にどうやってスタッフを集めるのかという問題も出てきます。
 解雇したスタッフからの信用はなくなり、同じスタッフは戻ってこないでしょう。バス会社やホテルも何ヵ月もこの状態が続くとスタッフは勤めることができず企業は解雇せざるを得ない。パートのスタッフを切り、次は社員を切ることになると、その人たちには使うお金がなくなるから消費を抑えて買わなくなります。その影響はあらゆる産業に及び、経済が完全に止まってしまいかねない。

 ーーニセコでも休業が増えています。ロスさんの事業はどうですか。

 ロス 幸いスキースクールなど冬の事業で雇用していたパートのスタッフの仕事はほとんど終わっています。今は社員とパートが少しいる状態。本来ならこれからラフティングのシーズンに入るところですが、4月、5月に来る予定だった修学旅行生の予約はほとんどが延期かキャンセルになりました。
 収入が見込めなくなった中で一日一日前読みしてどんな問題が出てくるか、どんな対策を取らなければならないかを考えながら動いています。今日のミーティングでは農家にアプローチして、当社のスタッフが農家で働くことができないかを検討しようということになりました。夏になると農家の仕事が減るので当社に戻って働くようなやり方です。
 現段階では何とも言えませんが、今年後半になれば延期されていた修学旅行需要が復活して非常に忙しくなる可能性もあります。忙しくなったときに対応できるようスタッフをどう確保するのかなど、心配は多いですね。

 ーー社員とパートは何人くらい雇用していますか。

 ロス 夏は80人くらいで冬は60人くらい。社員は18人ほどです。前読みして対策を講じていくことは必要ですが、現実の動きをしないと会社が潰れてしまいます。給料を出さなければ社員は会社に残ってくれません。当社で言えば、毎月1000万円弱の給料を出しながらも入ってくる収入はほぼゼロです。
 外出の自粛が解除されてもお客が戻ってくるのにはしばらく時間がかかるでしょう。GWに間に合うかどうかですが、今の状況では効果的な治療法やワクチンが見つかっていないため皆さんはシビアに対応するのではないか。

 ニセコには別荘がたくさんあります。別荘は家族や親しい人だけの閉鎖空間なので、コンドミニアムのような不特定多数のお客が集まる施設よりも別荘によりお客が集まってくる可能性はありますね。

 ーーこれまでニセコの成長を見てきたロスさんにとって現状はどう見えていますか。

 ロス 私が89年にニセコに来てから最初の10年間は成長とは逆の方向に行っていました。その後、日本のスキー場としては非常にラッキーなことに海外の人から評価されて投資が増えていきました。海外の人たちが入ってくると海外のアイデアや考え方が入ってきますから、スキー場、リゾートとしての考え方、育ち方も変わっていきます。ニセコの成長には海外のマーケティングの力が非常に大きかったと思います。

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