「およそMORIHICO.の経営は心が折れることの連続だった。この23年間ずっとそうだ。オープンを翌日に控えて従業員が全員いなくなったこともあった。倒産してもおかしくない場面は何百回とあったから度胸だけは付いている。目指すべき到達点が別の場所にあるからそういうことがあっても苦にならない」
「この本を書いたもう一つの理由は、起業した当時の心境をもう一度きっちりと思い返してみたいと思ったからだ。17歳のころ、財布の中に500円玉があって、『このまま帰ろうか、それともコーヒーを飲んで帰ろうか』と逡巡した後に喫茶店の扉を開いてコーヒーを飲んで帰ったことがある。財布の中は空っぽになったが、どこか気分はすがすがしかった。コーヒーだけでなく、良いひと時を過ごし希望を見出すことにも繋がったからだ。その気持ちを今も忘れていない。
財布に3万円が入っている人が出す500円ではなく、1000円しか入っていない人が出す500円にこそ価値がある。そういうことを大切にする仕事をしていかなければいけない」
「世間を見渡すと今は敵をつくらないような社会になってしまった。しかし、敵がいないのは味方もいないということ。摩擦を起こさない事なかれ主義や迎合主義が蔓延している。何かをやりたいという人が出てこない時代だ。起業しても何も良いことがない、メリットが何もないと思われている。そんな中でも起業したいという人は、サラリーマンになれなかった人やなりきれなかった人たちだ。私もそのはしくれの一人。自分の信念を曲げなかったら、必ず反対したり反抗したりする人は出てくる。それを怖がるなと今も自分をいさめている」
「近く海外に出店するが、海外で自分たちの価値がどう評価されるかを見極めたい。成功すれば世界で戦えることが証明され、日本人の劣等感が少しは払拭されるだろう。こういうことを少しずつでも皆がやっていくしかないのではないか。自分でリスクを取って行動するしかない」
■発売元 現代書林■発売日 2019年9月19日■初版7000部、全国書店並びにAmazonなどネット販売、一部MORIHICO.の各店舗■仕様 四六判、ソフトカバー200ページ■価格は1300円+税