ラルズ・松尾直人新社長インタビュー「数字で語る社風築く」「ロピアとこう戦う」「横山会長の存在」

流通

 ーーDSというだけでは、語られないと。

 松尾 アメリカのスーパーはローコストが当たり前で、ローコストでなければ戦えない。日本は、そこまでではなかったが、おそらくこれからはローコストがベースになり、それができないと、自然に淘汰されるでしょう。ローコストの中で、どういう色を付けるかという競争になると思います。

 ローコストはベースですが、当社は、物理的なローコストはできています。つまり出店コストとか、センターを持っていることのローコスト。それに加えて、オペレーションコストを見直さなければならない。オペレーションコストは、他社よりは低いものの、まだまだ改善できる点があると思います。

 ーーどのあたりが、ポイントになりますか。

 松尾 人件費です。

 ーー人手不足で時給も上がっている中でのローコストオペレーションは、どういう方向性ですか。

 松尾 例えば、青果部門を6人で担当しているとします。それを5人で回すには、何をすれば達成できるのか、ということをきちんと詰めていかなければなりません。例えば、センターをつくると、そこで働く人手が必要になります。本当にその人数が必要なのか、本当に半分の人数でできないのかを、トコトン追求しなければならないと考えています。

 札幌圏では、アークスグループのラルズと東光ストアが営業しています。一般食品は、商品マスターを統一してセンターも統一しました。その際、コストがかなり下がりました。生鮮食品も統一しようと模索中です。また、ラルズと東光ストアのデリカセンターは隣同士にあるので、使い方を効率化する予定です。

 グループ会社のユニバースでは取り入れていますが、ドライの括りの中で、2人のチーフが、全部門をコントロールするマネジメントを導入しています。今までは、酒やグロサリー、日配などそれぞれにチーフがいました。それを今は、2人で対応しています。ラルズでも導入して、かなり良いところまできていますが、まだまだやれると思います。そのためには、パートナー社員にも、作業を任せていかなければなりません。改善の余地がありますし、この分野で当社は遅れています。

 ーー出店については、どう考えていますか。

 松尾 一定のフォーマットで、出店の是非を決められるプラットフォームづくりを進めなければなりません。これだけの人口の地区で、土地の価格などを入力すると、自動的に出店の是非が判断できるような仕組みです。「何とか黒字になる」ではなく、「ここまでオペレーションコストを抑えれば出店可能」とか、数字に裏打ちされた出店シミュレーションです。

 ーー営業利益率は5・2%(2024年2月期決算)と高い。

 松尾 店舗の人員配置の構造を変えていけば、まだまだ高めることができる。まずは今の無駄を排除する。そのためには、数字で会話をしようと。

 ーーそうしないと「ロピア」や「トライアル」に勝てない。

 松尾 絶対に勝つためには、そこに手をつけなければならない。単店での対応は、頑張れば勝てると思います。でも、ロピアさんは、数年間で20数店舗を出す想定と聞いています。出店のたびに20数回、同じように頑張れるかといったら、それは無理です。

 ーー「ロピア」は、それだけ多店舗化できるのでしょうか。

 松尾 トライアルさんは、北海道に進出してから、14年間で30店舗まで増やしています。カウボーイさんの時は、徹底的に対抗策を打ちました。だから、それを承継して進出してきたトライアルさんは怖くなかった。大きな影響はないと思っていたら、いつの間にか、地方で成長していきました。彼らは、軒並み地方で成功しています。

 ーー11月の「ロピア屯田店」オープンによって、「スーパーアークスノース」(札幌市北区)や「ビッグハウス太平店」(同)との勝負になります。

 松尾 負けるつもりは、ありません。そのための事前対策もやります。事前対策に次いでオープン直前にすること、オープンした後にすることをすべて準備しています。

 ーー惣菜を含めた生鮮で差別化を図ることも必要です。

 松尾 立地によって生鮮比率は違います。東京の駅前や駅ナカなら60%くらいですが、北海道の郊外店舗は、生鮮で50%はとてもいかない。当社の平均も45%。「ロピア」は肉の構成比が、25%あります。肉とデリカと魚、とりわけ魚は、マグロとサーモン、デリカは、ピザと弁当が牽引役です。
 ロピアさんも当社と同じ500円でピザを売っていますが、オープニングでは2~3000枚を売るようです。当社の新規オープンではそこまでは売れない。トータルの売り上げが変わらないとしても、それはやはり改善の余地があるということ。彼らは、なぜ2000枚を売るのか、売るためには何が必要なのか。考えられることは全て実行します。後から悔いが残るような戦い方は、したくない。

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