ラルズ・松尾直人新社長インタビュー「数字で語る社風築く」「ロピアとこう戦う」「横山会長の存在」

流通

 ーー社長就任のお気持ちを、あらためて聞かせてください。

 松尾 打診を受けた時は、びっくりしましたが、ゼロベースで新たに事業を始めるわけではありませんし、立て直さなければいけないわけではありません。猫宮前社長(一久氏、現アークス社長)と一緒に作った事業計画を継続して遂行しつつ、さらに強化できるように取り組んでいくことが仕事なので、特に気負いはありません。

 ーーどのような会社にしたいと思っていますか?

 松尾 お客さまと従業員の満足度の向上に力を入れたい。今日来店されたお客さまが、明日も来たいと思う店づくりをしたい。また、味、鮮度、価格の優先順位に沿った品揃えを徹底して進め、「ラルズでなければならない」という商品を育成していきます。
 また、抽象的な、売れた・売れないではなく、数字で話す文化を徹底させます。仮説、検証のPDCAは当たり前ですが、仮説がやや曖昧で、結果から動くことも多い。仮説がないと、結果は単なる結果でしかない。仮説に対してどういう結果が出て、どんなギャップがあったかを追求してこそ、次のアクションに繋がります。仮説をきちんと立てるようにしたい。

 いずれにしても従業員たちが、楽しいと思えるような会社にしなければなりません。売り上げを伸ばし、利益を伸ばすことは、やらなければならないですが、それに嫌な気持ちで向き合うのと、楽しい気持ちで向き合うのとでは、雲泥の差があります。入社以来、営業が長かったので、現場が動かないと何も始まらないことは分かっています。現場の人間が、「やるぞ」と思えば、数字は黙っていても5%は上がる。これは、お金をかけなくても確実に効果が出ることなので、なるべく現場に足を運んで声を掛けたい。

 ーーラルズの強みと弱みはどこにあると考えていますか。

 松尾 強みは売り切る力です。その力は、徹底する力から来ています。「やるぞ」と決めたことは、一致団結してみんなで達成する社風が根付いています。それは、本当に当社の強みだと思う。

 弱いのは、先ほどの話にも通じますが、数字を意識する習慣がまだ十分ではないことです。行動を、数字になかなか置き換えられない。「やるぞ」と決めたら、「何を、いつまでに、何%やるのか」ということをきちんと根付かせたい。この間も、ロピアさんの新店である「五所川原店」(青森県)を見てきましが、社内でも見た人によって見解が全然違う。「我々に大きな影響は出ない」という人もいるし、「すごい」という人もいる。数字で話さないと、お互いの見解のギャップが埋まらず、対策を打つことも難しくなる。

 ーー松尾社長は「ロピア五所川原店」を見てどう思いましたか。

 松尾 意志が思いきり入っている店だと感じました。何を売って、会社を大きくしていくのかという意志が見えます。水産では、生のマグロとサーモンに力を入れて、冷凍サーモンは一切売っていない。それを、単なるディスカウンター(DS)と簡単に片づけられません。和牛と交雑牛の安売りをしていましたが、いずれも高級品。当社の店舗でも和牛を売っているが、あそこまでの品揃えはしていない。ディスカウンターといっても、今までのディスカウンターとは、明らかに違う。

 トライアルさんも、そうです。彼らが10数年前に北海道に進出してきた時、「数年で20店舗を出店する」とおっしゃっていた。数年では難しかったものの、今は、北海道で売り上げ400億円を超え、30店舗もある。2025年春までには33店舗、売り上げも500億円を超える存在になる。トライアルさんの店舗でも良いものが売っているし、当店で扱っていないものも置いています。

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