道北アークス六車亮社長インタビュー「地方スーパー生き残りのカギと買い物困難地域の切り札『ダ・マルシェ』」

流通

 ――今期、新店では「ダ・マルシェ」2店舗がありました。それぞれの状況は。

 六車 4月にオープンした「歌志内店」(歌志内市)は、6月に入り、売り上げの伸びが鈍化してきました。営業時間を午前10時にしていますが、少し遅いのかもしれない。他店舗との1時間の差が、そのまま売り上げの少なさに繋がっています。夏場までには午前9時オープンにしたい。売り上げは、計画よりも若干下回っていますが、公設民営なので出店のコストが発生しておらず、初年度から利益が出ると思います。

 ――「ダ・マルシェ剣淵店」(上川郡剣淵町)は、当初1億4千万円の売り上げ目標ですか。

 六車 「剣淵店」は、もうい少しいきそうです。剣淵町は、農家が人口の約3割を占めています。農家の人たちは、マチからほぼ出ませんから売り上げがある程度読めます。歌志内市の人たちは、砂川市や奈井江町に働きに行っている人も多く、どうしても売り上げが分散してしまいます。剣淵町は、農家が中心なので地元消費が底堅い。

 ――今後の「ダ・マルシェ」の出店は、自治体や農協からのオファーがあればと考えるということですか。出店するには、人口3000人以上が必要でしょうか。

 六車 人口は2700人から3000人は欲しいですね。「ダ・マルシェ」の出店要請は、知床の近くや網走、南富良野などから来ています。ただ、現状はセンターから片道1時間半が、「ダ・マルシェ」の出店限界です。遠くに出店するには、規模は小さくてもダマックのようなセンターをつくらなければならない。とは言いながら、当社で一番生産性が高い業態は、「ダ・マルシェ」です。人時生産性(にんじせいさんせい=1人が1時間働いてどれだけ利益を生み出しているかを測る指標)は、年間43億円を売っている「ウエスタンパワーズ」(旭川市)よりも高い。

 ――なぜ、そこまでに到達できたのですか。

 六車 徹底的にコンビニエンスストアを模倣したからです。コンビニは、バックヤードなしで、店舗では商品を作っていない。それならば、店舗で商品を作るのはやめ、従来のスーパーマーケットの部門担当など、縦割りを全部排除することにしました。全員がレジを担当でき、全員が品出しをできるようにしました。店舗には、包丁一本すらなく、バックヤードには休憩室と事務所があるだけ。ダマックから来る配送便は、1日3回、ほぼ定時に来ますから、店舗の人員配置も組みやすい。
 その結果、オペレーションコストは低くなり、損益分岐点も低くなります。「ダ・マルシェ」の平均損益分岐点は年間1億2、3千万円でしょう。1店舗当たりのスタッフは10人から13人で、常時、店舗には3人ぐらいしかいません。まさにコンビニと同じです。

 ――小型スーパーをコンビニ並みの経費で運営できるところは少ないと思います。「ダ・マルシェ」なら、札幌圏でも出店できるのでは。

 六車 そのためには、センターが必要です。「ダ・マルシェ」は、センターがあるから対応できるのです。肉とか魚などのアウトパック商品を調達しているような小型店では、利益がなかなか出ないでしょう。センターで、それら商品を自前化しなければ、利益を出すことは難しいのではないか。

 ――小型店に取り組みたいスーパーも多いと思う。

 六車 店舗に、まな板も包丁も置かないという発想をしなければ成り立たないでしょう。その発想ができるかどうかです。

 ――既存スーパーでは、そこまでなかなか割り切れない。やはり新鮮な商品は、インストアで作ったものを出したいと考えるでしょう。

 六車 そうなると歯止めがかからない。じゃあ、こっちもやるか、あっちもやるかとなって、結局店舗の運営コストが上がってしまう。

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