北海道空知生まれのホップ「ソラチエース」を使ったクラフトビール(地ビール)「ブルックリン ソラチエース」が、9日から飲食店向け専用サーバー「タップ・マルシェ」で飲めるようになった。このサーバーはキリンビールがクラフトビールの普及拡大を目的に開発したもの。キリンビールは、昨年10月から飲食店向けに壜タイプの「ブルックリン ソラチエース」の販売を始めているが、さらに市場拡大を目指して「タップ・マルシェ」での販売も開始した。(写真は、専用サーバー「タップ・マルシェ」から注がれたクラフトビール「ブルックリン ソラチエース」)

「ブルックリン ソラチエース」を製造しているのは、米国のブルックリン・ブルワリー。同社は1984年、AP通信記者だったスティーブ・ヒンディ氏によって設立された米国のクラフトビール製造販売会社。当時、米国のクラフトビール市場は始まったばかりだったが、同社は多様性のある品種を次々と開発、米国のクラフトビール市場で革命を引き起こし、今ではニューヨークのナンバーワンクラフトビールブルワリーになっている。
 米国のビール市場も日本と同様に縮小しているが、クラフトビール市場は2ケタ近い伸びを示し、ビール市場全体の25%を占めるまでになっている。

 同社は、2017年2月にキリンビールと共同出資でブルックリンブルワリー・ジャパンを設立、壜の「ブルックリンラガー」を全国発売、昨年10月には北海道で先行して壜の「ブルックリン ソラチエース」を販売してきた。ブルックリンブルワリー・ジャパンのクラフトビール販売量は、19年に前年比63%増となるなど急速に市場を広げている。この勢いをさらに加速する目的で飲食店向け専用サーバー「タップ・マルシェ」向けに3㍑ペットボトルの「ブルックリン ソラチエース」を投入することにした。詰め替え用の3㍑ペットボトルはキリンビール横浜工場(横浜市鶴見区)で製造する。

 実は、「ブルックリン ソラチエース」に使われているホップ「ソラチエース」には物語がある。このホップは、84年にサッポロビールが北海道空知郡で開発したものだ。ユニークな香りのあるホップだったが、当時の日本はピルスナーやラガーが中心で、ホップの個性が強い「ソラチエース」は市場に受け入れられなかった。日本での商品化は難しいと94年にクラフトビールが盛り上がりつつあった米国に渡る。それでも10年以上商品化されずオレゴン州のホップ農家の畑に眠っていたという。

 それを偶然、ブルックリン・ブルワリーのブルーマスターが09年に発見、ようやく日の目を見るようになった。このブルーマスターは、このホップを見つけたとき、「ホップ畑で臭いを嗅いだ途端にシーフードのレシピが浮かんだ。このようなユニークなホップは世界を探しても発見するのは困難だ」と話したという

 そうして18年10月、「ソラチエース」は壜の「ブルックリン ソラチエース」となって34年ぶりに生まれ故郷の北海道に戻ってきた。柑橘系とハーブを混ぜた香りは、シーフードの旨味を引き立たせ寿司や刺身とよく合い、ビールでは今までなかったようなフードペアリングが楽しめるという。

「タップ・マルシェ」の全国の設置台数は1万台以上で北海道では400台以上が設置されている。キリンビールでは、「タップ・マルシェ」でも飲めるようになることから「ブルックリン ソラチエース」の販売量は前年比3倍以上になると見込む。キリンビールの金丸俊憲・北海道統括本部長は、「北海道にはクラフトビールのブルワリーが20ヵ所を超え、47都道府県で3本の指に入るクラフトビール王国。ブルックリンブランドとともに北海道のクラフトビール市場を盛り上げていきたい」と話している。
(「ブルックリン ソラチエース」は様々な食材とのペアリングが楽しめる=写真)


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