北雄ラッキー(本社・札幌市手稲区)が、生鮮・デリカセンターや精肉加工棟(いずれも小樽市銭函)を増強させ、センター生産の比率を高めている。センター比率を高めることによって、店舗オペレーションの低コストを図るとともに、惣菜・デリカのオリジナル商品開発にも注力していく考えだ。食品も値上げが相次ぐ中、おいしさの訴求で選ばれるスーパーを目指す桐生宇優社長にインタビューした。〈きりゅう・ひろまさ〉1965年12月生まれ、57歳。1988年3月千葉工業大学卒、同年4月山一證券入社。1992年1月を北雄ラッキー入社、2007年5月取締役販売部長、2009年9月常務営業本部長、2013年5月に役付役員制の廃止で取締役専務執行役員管理本部長兼総務部長、2015年3月社長就任。創業者で名誉会長の桐生泰夫氏(85)の長男。
ーー2023年2月期決算の見通しはいかがですか。
桐生 上期は、光熱費を含めた諸経費の上昇と商品の仕入れ原価など、さまざまな価格上昇で利益を圧迫しました。下期にかけて、コストの圧迫をいかに吸収するかが一番の課題です。モノの値段が上がって我慢できるレベルではないのは、どこのスーパーも同じなので、周りの状況を見ながら販売価格を見直していかざるを得ません。販売価格に転嫁する商品については、細心の注意を払いながら改定しています。お客さまから高いと思われるような上げ方はしないようにしています。
――2021年11月の生鮮・デリカセンターの増強から1年強が経過して、効果はどうですか。
桐生 生鮮・デリカセンターの拡充強化によって、店舗オペレーションの改善もほぼ計画通りに進んでいます。さまざまなモノのコストが上がる前に、センターの稼働が間に合ったのは良かった。センターの増強稼働によって、その分、店舗のコストを低減することができたからです。店舗のバックヤードでのインストア生産は一定程度、軽減することができました。2022年3月から移転、稼働させた同センターの精肉加工棟では、今のところ月間供給量の7割程度ですが、計画的に生産量を増やしていっている段階です。
――生鮮・デリカセンターや精肉加工棟を増強したことによってコスト競争力がついたということですか。
桐生 原材料を含めて値上げの時期までに、間に合って良かったというのが実感です。仮に、センター稼働が遅れていたら、そのままコストアップになって光熱費分の吸収も難しかったかもしれない。現在も、全部を吸収しているわけではありませんが、収益面での効果は大きいものがあります。
これまでも生鮮・デリカセンターは稼働していましたが、2021年11月の増強によって、さらに内製商品を増やして利益率を上げていくことが目的になっています。いずれにせよ、センター化によって収益力を高めることを主軸にして動いています。もちろん、商品開発力にも注力しています。いろいろな面白い商品が生まれ始めています。惣菜系のオリジナル商品は以前から手掛けていましたが、さらにブラッシュアップしています。
――店舗のバックヤードで生産する商品とセンター生産する商品の比率は、どう想定していますか
桐生 温かい惣菜やお刺身のように、切りたてを訴求するような商品は、やはり店舗で対応していかなければならない。店舗で手を掛けるところは、とことん手を掛けますが、手を掛けなくて良いものは、どんどんセンター生産に移行していくことになります。
――精肉に関してのセンター比率は。
桐生 精肉も、まだ店舗で対応している部分があります。ただ、惣菜と同様に店舗に残すものは残します。例えば「山の手店」(札幌市中央区)などは、技術を継承しなければならない店舗ですから、そのような店舗では店内作業を残します。スーパーにとって、精肉の技術はとても大事です。当社には、他に負けないだけの技術力がありますから、それは継承していきたい。
精肉の担当者には、以前から食肉加工の専門教育機関に通わせて技術力を高める支援をしてきましたし、私もそうした教育を受けてきた1人です。以前は、どのスーパーでも店舗で精肉をカットしていましたが、今は外注先に丸投げしているスーパーも多いのではないでしょうか。