――ラッキーの店舗は、年数が経って建て替え時期に入っている店舗が比較的多いのでは。建て替えについてはどう考えていますか。

 桐生 好立地の店舗が多いので、建て替えをすれば売り上げを大きく伸ばすことができる店舗はあると思いますが、建て替え時期については慎重に検討しています。借入金返済も進めてきたので、投資余力はありますが、なるべく現預金で対応したいと考えており、それに向けて内部留保を高めていきたい。
 
 ――会計時のキャッシュレス比率が高いようですね。

 桐生 キャッシュレスは、既に買い物客の6割を超えてます。これは、他のスーパーよりも高い比率だと思います。当社のお客さまは中高年が比較的多いのですが、この購買層のキャッシュレス利用率がどんどん上がっています。お客さまのキャッシュレスツールは、当社も加盟している共同仕入れ機構シジシーが発行しているシジシーグループ共通電子カード「CoGCa(コジカ)」が主軸です。
 他の多くのスーパーは、シジシーに加盟していても自社の電子マネーを大手カード会社と連携して使っています。そうした場合、カード会社への手数料支払いなどが負担になって、キャッシュレス化による負担軽減と支払いコストの兼ね合いが難しいようです。当社の「CoGCa」は、ボランタリーチェーンのシジシーのカードなので、ほとんどコストを気にしなくていい。これは強みです。

 ――キャッシュレス化は6割程度で高止まりしそうですか。

 桐生 まだまだ増えるでしょう。私は、今後ますます現金を使わない生活になっていくと思っています。キャッシュレス比率がどんどん高まれば、会計オペレーション的にはとても楽になります。当社は、完全セルフレジもセミセルフレジも導入していませんので、レジ周りの合理化にはまだまだ余地があります。オペレーションの一層の効率化を図るためには、完全セルフやセミセルフレジを導入しなければなりませんが、マーケティングや顧客管理を含めた仕組み全体を変えなければならない時期がいずれやってくると思います。レジメーカーの提案をそのまま受け入れるのではなく、そういった時期を見据えてトータルに考えていきたい。いずれにしてもこの部分の伸びしろはあるということです。
 
 ――利益率向上も課題ですね。

 桐生 次の中期3ヵ年計画では目標数値も盛り込みます。

 ――売上高営業利益率は2・5%くらいが目標ですか。

 桐生 そこまで急激にはいかないでしょう。今は、売上高営業利益率が1%程度です。これまでは、1%を切る状態が続いていましたが、ようやく安定的に1%を超える状態まできました。中計では1・5%の数値目標を掲げようと思います。安定的に2%出せるような体質にしなければ、新規出店を継続的に続けることは難しいと考えています。
 生鮮・デリカセンター、精肉加工棟も本格稼働しましたから、利益率向上に向けた体質改善は進んでいくでしょう。まだまだ、筋肉質な経営とは言えないので、そぎ落とすところは、そぎ落としていかなければならない。その苦労を覚悟しています。
 
 ――社長に就任されてから8年になりますが、社長が目指す方向に進んでいる実感はありますか。

 桐生 世代交代が進み、今は若い従業員が主軸になって動いています。彼らのさまざまな新しい取り組みをしようという気持ちが表に出てきており、私たち経営陣もそうした熱意をしっかりと感じ取ることができるようになりました。今後も、当社はより良い方向に向かっていけると思います。小売業は変化対応業なので、若い従業員たちの柔軟な発想が不可欠。過去の成功例に固執していては、全く動けなくなって変化に対応できませんから。

 ――スーパー業界では、ある先駆的な取り組みを実践しても、すぐに他のスーパーがまねるので、店舗同士が平準化しがちです。店舗の差別化がなかなか難しいのではないですか。

 桐生 そんなことはありません。店舗の差別化は可能だと思います。全国のスーパーから、絶えず注目されているヤオコー(埼玉県川越市)は、いつの時代でも差別化の先頭を走っています。なぜヤオコーがあそこまで伸びていけるのか、それはしっかりとしたポリシーを組織全体が共有しているからです。また、全国のスーパーから視察や研修を受け入れています。ヤオコーの取り組みを導入しているスーパーは多いのですが、ヤオコーはまねされることを恐れていません。むしろ、まねることを受け入れています。その自信は、店づくり、商品づくりのコンセプトはどこにもまねできないと考えているからではないでしょうか。それが真の差別化だと思います。

 ――北海道発の差別化戦略が、全国のス―パ―に波及していくようになれば面白いですね。そういう素地が、北海道のスーパーにはあるでしょうか。

 桐生 北海道のスーパーは皆さん非常にレベル高くて経営者も優秀です。アークスやコープさっぽろ、ダイイチなど、本州のスーパーより格段にレベルが高い。そういう中での競争ですから、北海道のスーパーは本州以上に鍛えられていると思います。

 ーーどうもありがとうございました。



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