――北雄ラッキーは、生鮮比率が高いと聞いています。
 
 桐生 衣料部門を除けば、食品のうち、生鮮食品の比率はかなり高いですね。店舗の真ん中の棚に並んでいるようなグロサリー商品は、他のスーパーとの価格競争が激しいので、生鮮が強くないと始まりません。当社だけではなく、どのスーパーも生鮮強化は当たり前の話になっています。その中でも、当社は人材が豊富なので、自信を持って周りと戦っていけると確信しています。バイヤーも現場レベルの従業員も優秀だと感じています。若い従業員も増えてきていますから、その人たちの教育にも力を入れて個の力を強化していきたいと思っています。

 惣菜を含めて、美味しい生鮮食品を提供していくという当社の大前提がぶれなければ、商品開発面でも決して他のスーパーに負けることはないと思う。惣菜、つまり即食性のある商品についてはスーパーや外食の垣根はもうなくなっています。ですから、飲食店を含めて外食産業と戦っていくイメージを持たなければならない。
 外食産業は、コロナ禍でテイクアウトの充実や商品開発力を磨いてきたわけですから、スーパーと競争関係にある商品が増えてきました。逆を言えば、外食産業のテリトリーに私たちが足を踏み入れて、お客さまを引っ張ることもできる。付加価値を付けたおいしい商品に積極的に取り組むタイミングだと感じています。

 ――実際にそうした商品は生まれていますか。

 桐生 当社の大型店では、インストアでオリジナルのデザート系商品を増やしており、大変好調です。「篠路店」(札幌市北区)など数店舗で作り始めていて、お客さまからも「おいしい」と評判になっています。街のケーキ店や菓子店と十分戦っていけるのではないかとみています。
 
 ――ラッキー店舗の即食系商品で自慢できる商品は何でしょう。

 桐生 いっぱいありますよ(笑)。例えば、ポテトサラダは以前からしっかりと売っています。どうしてもスーパーの惣菜は、日持ちさせるためにマヨネーズの量を増やしてしまいます。そうすると、イモの香りなど風味が劣ってしまいます。当社のポテトサラダはイモの風味が十分に感じられて、「ポテトサラダを食べている」という実感が湧きますよ。以前からのノウハウなど、こだわりを持って作っているからです。そうした伝統のような無形の財産をさらにブラッシュアップして、おいしくしていこうと取り組んでいます。
 このように惣菜に関してはもともと、作る実力はあったのですが、見せ方というか売り方のパフォーマンスがあまりうまくなかった。最近は、こうしたパフォーマンスもうまくなってきているのではないかと自負しています。
 
 ――即食系の商品開発力は他社と比べても高いのではないですか。

 桐生 来期以降も、本当に力を入れておいしい商品を提供することを徹底してやっていきます。(安い)値段をつけて大量に販売する時代ではなくなりました。お値打ち感があって、「この価格でこんなにおいしいものが食べれられるのか」という方向に舵を切らなければ、スーパーとして勝ち残っていくことはできません。
 
 ――業務スーパーやトライアルの出店が増えています。低価格スーパーとの競争は避けて通れないと思います。

 桐生 デイスカウント業態も、厳しい環境になっているのではないでしょうか。トライアルカンパニーも、生鮮食品では品質の良い商品を増やしていると聞いています。ディスカウント業態もそういう方向を目指していかざるを得なくなっています。ディスカウント業態というのは、モノの品質をある程度落とさなければ、販売価格を下げられないのが一般的です。しかし、当社が目指している方向は、一定の品質以上のモノをしっかりと売っていくこと。仕入れの価格が上がってるからといって、味や品質を落としてまで売価を変えない選択はしたくありません。ディスカウント業態は価格訴求、当社はおいしさ訴求なので戦うフィールドが違います。当社は、おいしさで勝負すると決めていますから。
 
 ――中期的な経営計画は。

 桐生 目下、来期からの中期3ヵ年計画を策定中です。目標をしっかりと掲げ、すべての従業員が理解でき、対外的にも当社の姿勢を打ち出していく計画にしたい。基本は、企業理念である「日本一質の高いスーパーマーケットを目指す」からぶれることはありません。まずは今後3年間でどうやって持続的成長に向けた地盤をつくり、成長戦略に舵を切っていくかです。中計では、挑戦的な中身も盛り込んでいきたい。
 
 ――今後の出店戦略は。

 桐生 小型店は出店していますが、ここ数年間は大型店の出店をしていません。2014年3月にオープンした「倶知安店」が最後ですから、9年間新規出店をしていないことになります。出店は、スーパーにとって持続的成長の源泉ですから、新規出店については常に経営課題です。ただ、資材高や原燃料高などを考えると、ローコストで店舗運営できるベースをつくらないと出店できません。そのためにデリカセンターや精肉加工棟を増強してベースづくりを行っているわけです。跳ね上がるコストを吸収できる力がなければ、なかなか新規出店はできないと判断しています。

 一方、小型店は現在でも出店可能です。これまでに出店した小型店は、すべて黒字化しています。今後は、駅直結で惣菜など即食系のみを品揃えしたキャッシュレス小型店に挑戦してみたいですね。
 
 ――店舗リニューアルの予定は。

 桐生 今期は、2022年9月に「篠路店」のリニューアルを実施しました。リニューアル後は、冷凍食品の売り上げも伸びましたし、衣料売り場も少し圧縮して食品部門の品揃えを増やしたので、坪効率も上がっています。次は冷ケースの納期遅延で遅れている「シティ稚内」(稚内市)のリニューアルを行います。



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