「卸売スーパー」津司達也新社長インタビュー、「メーカー・卸との関係を強化、商品調達力を高める」

流通

 ーーバイヤーを通じて仕事の面白さを見つけたのですね。

 津司 その後、父から「仕入れる商品の幅を広げろ」と言われましたが、既にどの商品分野でも担当者がいますから、その人たちの仕事を横取りするようなことはできません。仕方ないので、その人の手が回らない商品の仕入れをすることにしました。メーカーや卸と交渉を進めるうちに、メーカーや卸には、値段を出しやすい時もあれば、値段を引かない時があることが分かりました。相手が値段を出せる時にたくさん買えば、相手の営業成績も良くなりますから、ウインウインの関係ができます。相手が営業成績で困っていたら、ある程度値段を考えてもらって大量に買う方が、相手にも私たちにもプラスになります。そんなことができるのは、幸か不幸か広すぎる店舗があったからです。

 今の現金問屋手稲店は、ダイエーのハイパーマート店舗跡で広さは3600坪もあります。最初は、テナントを入れないと使いきれないと思っていましたが、今では在庫置き場として有効に活用しています。センターを別に借りて、センター要員を配置したら、当然コスト高になります。その費用がかからないのでコスト的にも安い。
 でも、全商品をこの店舗に集めたら、お金も手間もかかります。卸から運んでもらえるものは運んでもらうなどして、使い分けています。大量に仕入れた商品の在庫置き場を兼ねた店舗になっていますが、大量に仕入れても売れない時がたまにあります。その時の悲しさたるや、半端じゃないですよ(笑)。
 
 ーーそういう経験はあるのですか。

 津司 最近では、鯖缶が大量に売れ残ってしまいました。数年前に鯖缶ブームになって、水煮の鯖缶が大量に売れた時期があります。それまでは、鯖缶で売れるのは半分以上が味噌煮でした。でも、あの時は水煮ばかりが売れた。20フィートコンテナで、1800箱くらい買って大量在庫にしました。実際、水煮の鯖缶はすごく売れていました。しかし、途中でブームが去って、途端に水煮が売れなくなってしまった。そうしたら、卸も水煮をみんな余しているので、安値で水煮を買ってほしいと言ってきました。私は、まだ売れると思っていたので、大量に仕入れてそっちを先に売ったのですが、最終的に自分たちで仕入れた水煮が全然売れなくなってしまったのです。ないと言っていたものが、後から大量に出てきたりして、特に水産系商品は怖いなと実感しました。
 
 ーーどんな教訓を得ましたか。

 津司 売れているからという理由で安易にブームに乗っかることは危ないということです。もちろん、ブームから安定的に根付くものもあります。鯖缶ブームの時は、人気の商品であればなんでも売りたいと思っていましたが、買いためていいものと悪いものとがあることを学びました。ただ、あまりそうしたことを考え過ぎると、面白いことができなくなる可能性もありますから、バランスが必要なのだと思います。

 ーー社長就任は今年の5月ですね。

 津司 5月1日付で社長に就任しました。数年前から社長交代の話はあったのですが、父が透析治療を行い、出社日数も少なくなっていたことや、70歳を超えて取引先の担当者ともなかなか話が合わなくなったこともあり、今回、新たな決算年度が始まるタイミングで交代となりました。父は、今後のスーパーについて考える時間を多く取りたいと言って会長になり、対外的な時間を減らしたということです。
 
 ーー社長と専務とでは立場が違います。どのような経営を進めていきますか。
 
 津司 今まで父と一緒にやってきたことは、経験として沁み込んでいます。その経験が、正しいとか、間違いということではなく、トライ&エラーを繰り返しながら改善を行って積み上げてきたものです。今回、現金問屋手稲店でチラシの折り込みをやめましたが、まず実際にそういうことをやってみないと、どんなことが起きるか分からない。その効果、影響を見た上で、カスタマイズしていけば良いと思います。跡を継いだ人の中には、突拍子もなく前任社長を全否定する人もいますが、私はそういう路線ではありませんから。

1 2 3 4

関連記事

SUPPORTER

SUPPORTER