ーー製造小売りにプラスして物流、倉庫といった足回りも整備する一気通貫型業態を目指すのか。
大見 そうだ。私たちは製造小売りに行かざるを得ないし、胆振東部地震や今回の雪害を教訓としてDC化の方向で事業を再構築することを決めた。自己完結型にどんどんと進めていく。そうすることでコスト構造にも切り込んでいく。
現在、週間の宅配売り上げは約20億円。20億円の中身は、野菜から100円均一商品のようなものまで含めて点数はとても多い。季節によって点数は変化するが、点数が多くなると、協力運送会社でのキャパシティオーバーになって対応できなくなってしまう。しかし、コープさっぽろグループが物流を内製化すれば、物量が増えるときだけ人を移動させることで対応できる。業務を委託していると、委託先ができないとなった場合、全部止まってしまう。これではだめだ。1万6000人いる職員を臨機応変に物流部門に行かせることが私たちならできる。
全体として人的資源のフレキシブルな移動が可能になる。しかし、これには全体最適をコントロールできないといけない。業務委託していると壁ができ、コントロールができない。私たちは壁を取り払って物流をできる限り自前化、なおかつ備蓄型の倉庫にする。このことによって、コープさっぽろの機能はどんなことがあっても回っていくようになり、社会貢献ができる。私たちの発展方向は、そこだ。
ーー北海道から出ていけないコープさっぽろの宿命ということもある。
大見 北海道で生き残ろうと思ったら、そうならざるを得ない。北海道の中で最も最適で低コスト構造で回すかを考えたら、自己完結の集約化は必須だ。
ーーDC化のモデルはあるのか。
大見 日本の小売業ではないと思うが、コープさっぽろグループは、TCからDCへ、この5~6年でほとんど全部の商品に対応したい。生鮮食品も冷凍すれば長期間持つものもあるし、冷蔵で日持ちするものもあるのでそういうものはDC化に対応する。江別物流センターの機能が、まさに北海道の生命線になってくるので、オンサイト発電も行い自家発電でセンターを回していくことも考えたい。機能を止めないことが一番重要だ。
ーー宅配事業の現状は。
大見 2021年度も4~5%伸びている。宅配トドックの基本的な発想は、2014年にアマゾンを視察したことから始まった。当時、アマゾンは30万SKUを扱っていたが、私たちは5000SKUしか扱っていなかった。これでは、実店舗に行って不足している商品を買わざるを得ない。それが当時の宅配の限界だった。週に1回しか来ない宅配の品揃えが5000アイテムでは、生活マインドを充足できない。
どう解決するかというと、やはり大型スーパーの品揃えとドラッグストア大型店の品揃えを足して9割をカバーできるようにしなければ、利便性は高まらない。それが2万SKUだった。その2万SKUを網羅する商品を提供すると決め、仕分けのロボットを導入したり、遠く離れた一軒家でも1時間から1時間半でカバーできる物流ネットワークを構築したりするため、全道にデポを50拠点つくって対応してきた。
また、2万SKU以上を取り扱うためカタログによる販売も4年前から始めた。カタログによる販売はずっと伸び続けている。宅配の価格は、アマゾンプライム価格を全て下回った売価を設定している。原稿入稿後のタイミングでアマゾンプライム価格が私たちの価格を下回るときもあってそれは負けてしまうが、絶えずアマゾンプライム価格を調べた上で売価を付けている。
1週間に1回しか届けないモデルだが、1週間に1回、大型スーパーと大型ドラッグが利尻礼文島の一軒家まで届けるコンセプトだ。実は週1というのは、一番良いサイクル。曜日指定で生活パターンが決まって便利だという人がたくさんいる。スマホでで1個しか発注しない人もいる中で、物流費を掛けて届ければ北海道ではコスト割れするのは当たり前だ。宅配トドックは、ラストワンマイルの集約配送をすでに具現化している。
ーーそれに相乗りできるものがまだまだあると。
大見 ラストワンマイルの物流効率は、極めて高い段階に入っている。これから組合員の宅配トドック利用が増えていけば、配達コースに組み込むだけなので、最終的には規模の経済が発揮され、利益は大きく改善される。既にそこに到達しているから強い。
ーー宅配トドックの利益率は。
大見 今は売上高経常利益率が8・6%だが、今後3年で10%まで持っていく。江別物流センターの敷地内の空きスペースを利用して物流倉庫を新設、北海道のEC系プラットフォームを構築しようと考えている。道民がECを利用すると、関東から運ぶ場合は送料が発生する。コープさっぽろグループは、EC系物流会社と連携してECの北海道プラットフォーム機能を果たすことができないかと考えている。これを構築する一環が、今回取り組んだ宅配トドックでの無印良品の取り扱い。物流機能と倉庫機能の2つを強化していくことができるのは、私たちがそれらのベースを持っているからだ。