コープさっぽろ(本部・札幌市西区)が、物流関連投資を強化する。2022年度から3年間で100億円近い投資を実施、店舗と宅配の足回りをより強固にする。目指すは、災害時でも滞らない物流の実現だ。キーワードは「TC(通過型物流)からDC(在庫型物流)」。在任15年を迎える大見英明理事長(63)に、物流関連投資を強化する狙いと来年度以降に向けた店舗、宅配事業の見通し、喫緊のロシアによるウクライナ侵攻による影響などについてインタビューした。(写真は、インタビューに応えるコープさっぽろ大見英明理事長)
ーーロシアのウクライナ侵攻が小売業に及ぼす影響をどう見るか。
大見 資源と食料の輸入が厳しくなることは、はっきりしている。どこまで価格が上がるかは今後の動向次第だが、間違いなく上がり続けるだろう。食糧だけでなくエネルギーも含めた自給率の問題に立ち返るしかない。地産地消のように、地域における経済資源をどう有効に利活用するかという問題になってくるだろう。例えば、漁業も沿岸漁業といったことにもう一度戻らざるを得なくなるし、農業においても休耕地の有効活用の議論も起こってくるだろう。国は自給率をどう引き上げるか、本気で取り組まないと問題解決にならない。
コープさっぽろは、北海道の農業生産物から始まって一定程度、地域循環型の事業を強めてきた経過がある。それが今後も大きな流れになる。北海道は、食料生産基地の価値をもう一段高めていくことが必要になる。自分たちの食べるものと、自分たちの生活に必要な電気を含めたベースエネルギーは地産地消、自己完結型の調達にならないと本質的な問題の解決には繋がらない。
ーー商品価格高騰と品不足に拍車がかかる。
大見 原材料価格が上がれば商品価格も公正妥当に値上げせざるを得ない。私たちは、無駄をなくしていくことを含めた事業全体の経営改善を一歩でも二歩でも進めるしかない。それ以外にできることはない。職員の賃金も上げなければならず、コストがすべて上がる中で、かっこいいことは言えない。
コロナ禍で世界のブロック経済化の流れがあったが、今回のロシアによるウクライナ侵攻でエネルギーを基軸とした危機がさらに表面化する。食とエネルギーという生活をしていく上での根幹的な前提がぐらついている。日本の経済的ポジションが低下すればするほど、外部調達が難しくなるのは必然。コロナとウクライナ侵攻によってそれらが加速した。元には戻らない。再生エネルギーをどうするかというような悠長なことは言っていられなくなる。温泉熱発電、水力発電、バイナリー発電を進めて脱石油、脱ガスを進めるしかない。
ーーイオンなど50社が共同配送を始める。輸送コスト上昇を見据えた取り組みだ。
大見 コープさっぽろは、関係会社で物流を自前化しており、店舗に商品を運んだ帰りに地方の産品を積んでセンターに戻っている。積載集約化のレベルはかなり高い。業務提携しているサツドラホールディングス(本社・札幌市東区)の物流も行っており、物流の自前化をもっと強化する。それを実行することでコープさっぽろグループのトータルなメリットが出てくる。
ーーどう強化していくのか。
大見 トラック輸送は将来的に自動運転になるという議論があるが、そう簡単にはいかない。北海道には雪があり、様々な対応をしなければならず、本州のようにはいかない。江別の物流センターで、今後3年間で56億円を投資する。センター敷地内に冷凍倉庫も38億円を投じて今年着工する。コープさっぽろグループとしてトータルに省エネ、コスト削減を考えており、2023年度には納豆、珍味、ドライフルーツを製造しているはまなす食品(北広島市)の工場を閉め、江別食品工場の隣接地に移転新築する。大型冷凍倉庫は、江別物流センターにある駐車場敷地3000坪のうち1800坪を使って建てる。5000パレットを納品でき、2023年度中に竣工させる。
現在、コープさっぽろグループの物流倉庫は、通過型のTC(トランスファーセンター)と呼ばれるもの。それを在庫型のDC(ディストリビューションセンター)に変えることが基本的な考えだ。なぜそうするかというと、今冬の豪雪被害のように道路が寸断され、交通がマヒすると物流が止まってしまうからだ。一定の備蓄をしておかないと商品が確保できない。サプライチェーンをムダのないようにギシギシに構築してしまうと、在庫バッファー(在庫切れを防ぐため意図的に持っている余分な在庫)がないので結局は商品が届かなくなる。止めないために、在庫を持つことが必要になる。できれば1週間以上の在庫をもって運用したい。TC型からDC型に変わることで、物流のトータルコストも大きく削減できる。問屋機能の一部を内製化して小売りだけでなく、基幹物流、倉庫業もやり、自己完結型に持っていく。