イオン北海道・青栁英樹社長インタビュー「マックスバリュ北海道との合併で地域活性化に貢献」

流通


 ーー入社は信州ジャスコでしたね。経歴を教えてください。

 青栁 関東圏の大学を卒業して1983年4月に信州ジャスコに入社しました。当時のジャスコグループはダイエー、西友などに次いで4番手。ジャスコを選んだのは、学歴や性別に関係なく実力主義の社風があったからです。
 店舗勤務を経て入社2年目からリクルーティングの仕事もしました。99年に統廃合があって、信州ジャスコはジャスコに吸収合併されました。せっかくだからこの機会に全国に挑戦しようと挑戦を続けてきたら、北海道に来ることになりました。

 ーーGMS(大規模スーパー)の店長のほかSM(食品スーパー)の店長やSMの事業部長もされていますね。

 青栁 店長経験は、SMの方が長いのですね。マックスバリュについて言うと、ジャスコは当時、新しい流通業態を創出するプロジェクトを立ち上げていました。私は、アメリカの視察研修に信州から参加させてもらい、アルバートソンやボンズなど当時のアメリカで一番元気が良かったスーパーを視察しました。一生懸命分析して、日本国内にどういうスーパーマーケットチェーンを作るのが良いかを議論した末にフード&ドラッグのマックスバリュに行きつきました。
「マックスバリュ」店舗は、全国で立ち上がりましたが、私は長野県のプロジェクトに関わり、店長や新店舗を立ち上げました。35歳の時です。以降、2005年3月にイオン佐野新都市店(栃木県)の店長になるまでマックスバリュの店長をしていました。
 07年4月にはマックスバリュ事業本部東北事業部長を経験し、その後はGMSの人事教育、総務、ストアオペレーションというシステム部門などで店舗の働き方をどう変えるかという仕事もしました。
 ひと通りの仕事をした後、デジタル領域も担当しました。そこから2年間は、ネットスーパーやECショップなどを経験。イオンの中でこれだけ違う部署で仕事をしてきた人間は、あまりいないと思います。

 ーー多くの分野を担当してそれぞれの勘所をつかんだ経歴から、事業を俯瞰的に見ることができますね。

 青栁 実務的な細かいところに入り込むのが自分の欠点。知りすぎているために細かいところも気になってしまう。良くない面だと気を付けています。

 ーーイオン北海道の強みと弱みをどう分析していますか。

 青栁 役職員の多くが地元北海道の人たちですから組織の結束は固く、これまで歴代トップが進めてきた全員経営の発想が根付いています。現場の従業員たちが課題やテーマを自ら決め、PDCAで考えていくことが組織に浸透しています。これは表に出ない強みだと思います。これがベースになって北海道独自のMD(販売政策)も実現しています。ランドセルや浴衣、水着など北海道内ではダントツのシェアをとっているカテゴリーがいくつもあります。今、力を入れているヘルス&ウェルネスやフラワー&ガーデン、靴なども専門店化できるほどの力があります。一つひとつが確実に育ってきているのが強みでしょう。

 GMSでよく言われるのは、何でも揃っているけれど欲しいものがないということ。カテゴリーキラーの専門店にお客さまを奪われている面も確かにありますが、私たちの店舗は、特に地方においては百貨店並みの商品や品揃えを期待される面が非常に強い。裏返せば、地方店舗は地元になくてはならない商品を提供できる価値のある存在であるということ。
 地方店舗を不良資産と考える人もいるかもしれませんが、使い方を変えていくことで価値が結びついてくると思います。私たちは、館(やかた)全体が陳腐化することがないように、定期的に大小問わず活性化を行っており、そのことによって店舗年齢を若く保つことができていると思います。

 弱みは、デジタルやEC(電子商取引)への対応力。これはグループ全体の共通課題ですが、デジタルやECを自分たちのものにできるかどうかかかっています。18年は当社のデジタル元年でした。3月から『イオンお買物アプリ』をリリース、ホームページも3月に変更してデジタルを使いながらお客さまとの接点をどう増やしていくかに取り組んでいます。これらを自分たちのものにして磨いていきたい。そのことによって店舗が資産としてより生きてくることに繋がります。

「まいばすけっと」も18年からネットスーパーの受け取り場所になりました。まだ件数は少ないですが、確実に固定客がついています。従業員の作業をネットに置き換えることによって作業負荷が下がるので、今後はもっと深掘りして店舗とネットをうまく使っていきたい。

 私たちには、将来の発展が見込めるコンテンツがいくつもあります。キャッシュレス化を見通すとイオンカードがあり、電子マネーのWAONもあります。歴代社長が推進してきたことを有機的に結びつけることによって、新たなビジネスに挑戦できる素地があります。それを実現するのが、私の役割だと思っています。これまでの経験を無駄にせず、きちっと形に変えていくことが最大の使命だと認識しています。

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