米国とFTA(自由貿易協定)を結んだ韓国の農業を実地調査するため、道内農業団体などが年内にも韓国を訪問する予定だ。北農中央会やホクレン、道議会、道庁などが訪問団を結成する予定で、韓国農業がいかに衰退しつつあるかを把握し、TPP参加反対への理論武装を強化する考えだ。


平成の開国と菅首相が言うTPP(環太平洋経済連携協定)は、農業分野だけが大きくクローズアップされているが、弁護士や医師のどのほかサービス産業や公共事業も自由化されるため、国民生活全般に大きな影響を与える。農産物市場の開放問題に矮小化されているのは、全国紙やNHKをはじめ大手マスコミが農業市場だけを取り上げ、繰り返し報道することに原因がある。

道庁幹部の間では、TPPに至る最近の日本を取り巻く一連の動きには米国が大きく絡んでいるのではないかという見方がある。つまり、尖閣諸島の中国漁船から始まってロシアのメドベージェフ大統領の国後訪問、そしてTPPへとすべて米国が描いたシナリオではないかというものだ。サブプライムで世界金融危機を引き起こした米国は、輸出主導で景気回復を図る以外に道はないと自国通貨安を強く進め、それがG20で集中砲火を浴びることも見越してTPPを補助線として用意していた。

農産物市場の開放による影響は大きい。関税が撤廃されれば道内の農業生産額は5563億円失われて、農家の7割が営農困難な状況に陥るという試算も出ている。一足先に、米国とFTAを結んだ韓国は確かに家電、自動車などで優勢に立っているが、農業にはどんな影響が出ているのかがはっきりしていない。

このため、北農中央会やホクレン、道議会、道庁農政部が一体になって早急に韓国農業を調査する訪問団を派遣する。  韓国ではBSE(牛海綿状脳症)問題から米国からの牛肉輸入を生後20ヵ月未満に限っているが、米国はFTAを盾に開放圧力を強めている。また、遊休農地がFTA締結以降、急速に増えている実態もあるという。

道内では農業界だけでなく経済界や消費者団体、道議会や道庁もオール北海道で結束してTPP参加反対を主唱している。ただ、大手マスコミの報道姿勢によって、既得権益を守ろうとする『遅れた北海道』というイメージが作られかねない情勢だ。

今回の韓国訪問団が調査するFTAによる農業の実態を早急にとりまとめ、TPPで起こりうる事態を全国に発信していくことが求められる。

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