北海道新幹線の札幌延伸は、今年8月が政府方針のヤマ場と見られているが、地元合意のネックとして最大の焦点になっているのが、JR北海道が表明した新函館と函館間を結ぶ在来線の経営分離。函館市は、新函館と函館間をJRが責任をもって運営することを前提に函館駅周辺整備などに取り組んできただけに、JR北海道の経営分離表明に強硬な反対姿勢を見せている。


反対の先頭役に立っているのが西尾正範・函館市長。経済界も西尾市長に同調しているものの、3年前の市長選では経済界と西尾市長との間は必ずしも良好というわけではなかった。
しかし、こと新幹線問題については平仄が一致している。
経営分離を巡る対立を解きほぐすのが道庁だが、6月22日には道庁の高井修副知事と西尾市長、JR北海道中島尚俊社長の3者会談が行われたもののJRは主張を変えず、平行線のまま。道の調整能力が試されることになるが、話が一筋縄ではいかないのは、来春に控えた函館市長選が絡んでいるためだ。
西尾市長が2期目に挑戦するのは既定路線と見られているが、昨年12月に路線の違いで副市長だった工藤寿樹氏が辞任、市長選に出馬することを表明しており、現職市長と前副市長が市長選で争うことになれば、市政の停滞は避けられない。
西尾市長としては、JRの経営分離に対して譲歩を引き出せば経済界との関係も良好になり選挙戦を有利に戦える。何としても早期に一定の前進を勝ち取りたいと考えて強気で攻めてくると見られる。
新幹線の延伸問題は、国政選挙の材料として与野党問わず利用されてきたが、首長選の場合、争点になったとしても総論賛成程度で具体論として議論になることは少なかった。
しかし、函館市長選はまさに新幹線に伴う在来線問題が最大の争点になる。工藤前副市長のこの問題に対する姿勢は分からないが、西尾市長は三者会談で何らかの担保を引き出し、市長選を有利に戦うアドバンテージを得ようと考えて当然。
『整備新幹線は、政治新幹線』とは良く言ったもので、今後北海道新幹線の札幌延伸を巡って、直接の利害が絡む沿線市町村の首長選で函館市と同様の議論が巻き起こりそうだ。

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