ーー金融庁は金融機関の出資規制を緩和する方向です。
遠藤 出資規制緩和のタイミングを捉えて、地域商社を設立する方向で進めています。21年1月1日付で50代の食品商社(東京)マネージャー経験者を当金庫に招聘し、地域商社戦略室長に任命しました。地域商社戦略室は室長を含めて当面3人で活動し、地域商社の設立の準備を整えます。商社経験者に来てもらい、それによって私たち自身が刺激を受けるのが良いと考えたからです。私たちの金融文化に商社文化が新たに加わることによって面白くなるのではないか。規制緩和の法案は今年秋くらいに施行されるようなので、そのあたりの時期を地域商社設立の第1ターゲットとして準備していきたい。
ーー『KONSEN(根釧)魅力創造ネットワーク』は、地域の底上げに繋がったのではありませんか。
遠藤 2012年12月18日に設立しましたが、この組織を立ち上げて良かったと思います。農林水産事業者や観光関連の事業者が、見本市への出店などを通じて学び合い、互いに連携する素地ができつつあります。一見すると厳しそうな地域マクロ経済環境も、経営者の輪、人の輪でカバーできることが立証されつつあるのがこのネットワークの現状だと思います。そこに、当金庫が地域の企業と一緒に進めていく地域商社が接点になっていくでしょう。
ーー2021年3月期の見通しは。
遠藤 9月の中間仮決算は、貸し出しが伸びましたが金利は下がっているので、金利収入は前年同期を下回りました。資金運用はこういう金利環境なので多様化する方針の下、国債だけではなく株式などを組み合わせたため、有価証券の配当は増えました。信用コストも大きく動いていないので、純利益は3億6300万円と前年同期間比で79・7%増となりました。
下期も取引先の業績が急速に悪化することはないとみているので、貸出金は横ばい、有価証券運用も上期と同様の環境とみており業務純益は前年を超えるでしょう。信用コストが増えることはないという見通しなので、最終的な利益はプラスになる見込みです。短期的に立派な利益を出せば良いという考えはなく、将来のために備えようという腹六分経営を継続してきました。当信金の規模で言えば、5億円前後の利益で毎年安定していれば、十分だと認識しています。利益が増えそうなら将来の信用コストに備える慎重な考え方が組織文化になっています。
戦争で根室の街が焼かれて以降、2年間くらい赤字が続きましたが、それ以来一度も赤字を出していません。旧根室信金時代からの健全経営の考え方が、今も底流に流れています。いつの時代でも想定しないことが起こり続けて未来が来ますから、何が起きても良いようにしておかないといけない。
ーー最後に、信金合併など再編についての見解を。
遠藤 道東には6信金がありますが、結束も強く気脈を通じながら持ち場、持ち場で広い道東を守り合っているので、互いにリスペクトしている関係があります。合併をして、何兆円規模になって利用者が喜ぶかというと、それは違うと思います。激動期には助け合う関係を構築しながら、互いの理念や歩みを共有することが、協同組織金融機関の本道だと考えています。(この稿、終わり)