根室・釧路管内と札幌市に拠点を有する大地みらい信用金庫(本店・根室市)は、釧路・根室地域の基幹産業の一つである水産業が厳しい状況にあることから、取引先の事業転換や新分野進出への伴走型支援を強化している。また、債務者区分の引き当て率を変えるなど備えをしっかりとして、取引先と向き合う姿勢をさらに強めている。また、地域商社の設立にも意欲を示しており、道東から信用金庫の新しい道を模索していく考えだ。遠藤修一理事長(63)に2020年の戦略などをインタビューした。(写真は、大地みらい信金・遠藤修一理事長)

 ーー根室地域の水産業は厳しい状況が続いています。

 遠藤 当金庫の営業エリアでは、酪農は好調ですが水産は厳しく、基幹産業である一次産業に跛行性があります。水産の厳しさは累積的なもので回復の見込みは見えていません。しかし、このエリアの水産は200海里規制以降、厳しいことを何度も経験していますから、リスクを分散したり置き換えたりして経営力を発揮している企業もあります。先を予見して手を打っていたところは底堅く、こうした水産の状況でも最高益を出している企業もあります。高いレベルでマーケティングを行っている企業は、原材料の価格にあまり影響を受けていないようです。

 今シーズンの根室管内の秋サケ水揚げ量は8200tです。ピークは2003年の6万8000tで、このときは北海道全体で20万tを超えていました。サンマの水揚げは花咲港で1万6000t。ピークは11年の7万8000tだったので、今シーズンの水揚げを考えると回復は難しいというのが地域のコンセンサスです。体力のある企業を含めて、事業転換や新分野挑戦のニーズは高まっています。そこにしっかりと寄り添っていくのが信用金庫の使命だと考えています。

 ーー15年7月に札幌支店を開設してから4年半ですが、預金・貸出金の状況はどうですか。

 遠藤 現在、札幌支店の融資量は150億円を超え融資先数も200先以上になっています。札幌支店の融資先は、1先1億円前後の一般の事業先が大半で不動産向けは3~4割程度。分譲、賃貸、介護施設など不動産向け融資は多岐にわたりますが、不動産相場などは頂点を迎えていることを踏まえ、個別案件の内容をよく吟味して融資しています。

 ーー19年9月の中間仮決算では、貸出金が減少していますね。

 遠藤 毎年、地方公共団体向けの融資が減っています。ピークでは約450億円ありましたが、今は200億円強。地公体は財政健全化を目指して借り入れを減らしているほか、地公体の起債金利水準はほぼゼロに近い。一時借り入れも含めて預金金利よりも低い金利なので融資を増やしてもあまり意味がない。地公体向けは無理せずに対応していますから減少が続くでしょう。

 ーー中間仮決算では国債の売却が増えて業務純益を押し上げました。

 遠藤 国債の相場もピークと見て売却しました。一回、益を出しておこうというのが国債を売却した理由です。

 ーー貸倒引当金の引き当て方法も変更しました。

 遠藤 金融庁は金融検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方をディスカッションペーパーで公表していますが、引き当て方法について各金融機関は実情に合わせて今までより幅を持たせて行えるようになります。それを受けて当金庫は前倒しで引き当て方法を見直しました。金融庁、日銀は金融機関の信用コスト(引き当て)が薄くなっていると指摘していますが、当金庫は要注意債権も以前から厚く引き当てしています。今回、破綻懸念先債権についてこれまでの一つの区分から二つの区分にして再生に向かう取引先をよりしっかりとサポートできるようにしました。経営に影響を受けることを後に行うのではなく、先にやることにしたわけです。

 これまで破綻懸念先は100%の引き当てという1区分でした。これだけ引き当てをしている金庫もあまり例がないと思います。海の街として過去の一番厳しいときとの比較でそうするようにしたのです。当局からも保守的過ぎると言われ続けてきましたが、金融庁の引き当てに関する方針が変化してきたことを受けて2つに分けることにしました。正常先から要注意先の引き当て率は他の金融機関よりも厚めの平均20%くらいで、破綻懸念先でいきなり100%にするのではなく、60%くらいの区分も設けました。業況が改善すると要注意先、正常先へ戻っていきます。平均3~5年くらいのスパンで債務者区分を見ていきます。

 ーー破綻懸念先の引き当て率を二つに分けることでサポート体制は変わりますか。

 遠藤 個別融資先の中身によりますが、当金庫の融資先対応は経営者が6割、商売の中身が3割、残りが財務諸表という6・3・1で対応しています。取引先は、いろいろと苦しいことがあったとしても、事業承継などで経営が好転したりその逆もあったりします。経営が良い方向に向かっていくのなら、そこをしっかり伸ばしていくという考え方は、破綻懸念先を二つの区分にしても基本的には同じです。

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