ーー信金業界で破綻懸念先の引き当て率を二つに分けるのは初めてですか。

 遠藤 本州には数金庫あると聞いていますが、これから増えてくると思います。経営的には備えておくことは大事ですが、取引先に対しては備えて終わりではなく、きちんと商売に向き合うことが本当の目的です。

 ーー引き当てを厚くするために中間仮決算で国債売却による益出しをしたということですか。

 遠藤 それは別な話です。引き当て方法を変えようと思っていた時期と有価証券売却の時期がたまたま重なっただけ。引き当てを厚くしていると言いましたが、担保と貸倒引当金を除いて裸で影響を受ける実質不良債権がいくらなのかが経営的には重要。20年以上前から悪いことは先に織り込んできましたから、不良債権比率は表面上、6%や8%と高いのですが、その分、後の心配はありません。取引先と丁寧に向き合っていく考え方ですから実質不良債権比率も今後開示していく考えです。ちなみに19年3月末の実質不良債権比率は0・43%、9月末は1・15%で0・72ポイント上昇しました。

 ーー19年9月には札幌以外で初めての「NoMaps」(クリエイティブな発想や技術によって次の社会・未来を創ろうとする人たちのための交流の場)を釧路で開催しましたが、その狙いは。

 遠藤 釧路・根室地域は一次産業中心のエリアですが、ITを含めて新しい産業構造に少しずつでもモデルチェンジしていかなければならないと考えています。ITと地元産業の掛け算を一生懸命にやれば、地域の課題解決に必ず結びついていきます。黙っていたら出会うことのない東京や札幌の起業家たちとNoMapsを開催することによって、地元に接点ができる効果は大きい。
 直接のきっかけは川上郡標茶町出身の伊藤博之クリプトン・フューチャー・メディア代表取締役との縁からです。釧路会場には約240人が来場しましたが、来年度以降も継続開催する予定です。1回目は私が実行委員長をしましたが、来年度からは実行委員長を1年交代にすることにしました。NoMapsを釧路・根室で根付かせていくには、実行委員長を1年交代にして活性化、アイデアを出してもらう方が良いと考えたからです。

 ーー地域の連携組織である「KONSEN(根釧)魅力創造ネットワーク」もスタートから7年が経過、着々と実績を積んでいます。

 遠藤 根釧地域の食品製造業者や生産者のメンバーは7年間の活動によって営業上も非常に力を付けたと思います。皆さん、新しい取引先を増やして順調です。観光関連事業者も参加してもらうようにしたのは3年前からで、外国人観光客への対応や観光資源の磨き上げなどに取り組んでいます。道や北海道運輸局、北海道観光振興機構は21年に「アドベンチャートラベル国際サミット」の北海道誘致を決めていますが、それが実現すれば北海道全域にハイレベルの観光ツーリズムのプロが多数来道します。その機を捉えて道東の観光資源を見てもらうように働きかけたい。KONSEN魅力創造ネットワークも設立以来、私が代表を務めていますが、今後はメンバーの事業者の方々に交代していきます。そのことによってより活性化していくと思います。

 ーー金融庁は、金融機関が地域商社を設立しやすいように規制緩和しました。大地みらい信金の地域商社への対応は。

 遠藤 規制緩和を受けてまず第一歩を踏み出さなければならないと考えています。根釧をベースにした地域商社をなるべく早く立ち上げたい。信金の出資比率は40%未満ですが、上限ぎりぎりの39・9%まで出資して筆頭株主になり、地域の皆さまにも出資を要請して取り組んでいきたいと思います。一番考えているのは、持続可能性を持つ事業を展開していくこと。『KONSEN魅力創造ネットワーク』のようにこれまで走ってきた蓄積がありますから、手掛けたい事業プランはいくつかあります。地域商社を通じて地域と一緒に取り組んでいく展開になると思います。金融で地域貢献することと、地域商社という非金融で収益を上げながら地域に貢献していく両輪が信金の新しい道だと思います。(終わり)

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