北海道信金・前田繁利理事長インタビュー、「合併新金庫が勝ち残る道」「地方創生の架け橋になる」

金融


 ーー取引先を定期的に訪問する、いわゆる足で稼ぐのは信金のベースですね。

 前田 以前の信金は取引先に出向いて集金するスタイルが主でしたが、バブル崩壊で集金をしない金庫も増えました。旧札信金は定期積み金の集金をずっと継続してきました。北海道信金になっても中小企業が主な取引先であることに変わりはありません。社長が旦那さんで経理がご夫人の場合、「社長が仕事以外のことに熱を入れているので辞めさせてくれないか」などと相談される時もあります。それは相手先に出向いているからこそ出てくるような相談です。

 取引先とのお金の相談は当然ですが、このように他の相談もいろいろと出てきます。そうした際の対応が良ければ感謝されます。取引先に喜ばれることが職員のプライドに繋がりますが、それがわかるまでにはかなり時間が掛かる。早く知ることができれば誇りをもって仕事ができるようになるのではないでしょうか。
 要はどれだけ相手の懐に入っていけるかです。話を聞いてわからなかったら支店に戻って相談すれば良いし、本部に助けてもらうことだってできます。訪問先がたくさんあってその訪問先からリクエストをもらい、消化するサイクルができてくると引き出しも多くなります。

 ーー今年3月から金融庁は各信金に課していた返済猶予先の報告義務を休止しましたが、返済猶予先の中には経営が立ち行かなくなるケースも出ています。

 前田 リスケジュールしているところでイグジット(出口=成長路線に戻ること)できる先は、デッド・デッド・スワップ(DDS、貸出債権を劣後ローンに切り替えること)など様々な再生手法で対応しています。何件かはファンドを使い始めており、その件数も増えています。まずリスケ先が単年度利益を出せるかどうか、出すためにどうしたらいいのか、再生に何年掛かるかを洗い出さなければいけない。

 もちろんリスケ先で収益が見込めない企業もあります。リスケ先は今年3月までにヒアリングを実施して問題点を整理、どう対応するかについての検討を全て終えました。現在は進捗を管理して対応しています。要は対象企業がきちんと営業できているかどうかです。繰越欠損がたくさんあっても単年度でプラスの利益があれば良しとしています。今はいろいろなところで回復の時期。皆さんに頑張ってもらいたいですから。

 ーーフィンテックやキャッシュレスへの対応は。

 前田 フィンテックについては、19年1月からAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)連携を開始しました。この連携により、取引先は家計簿ソフト等を利用する場合の利便性・安全性が向上します。現在5社の人事労務ソフト開発会社等の電子決済代行業者とAPI連携を実施しており、今後とも状況に応じて拡大する方針です。
 また19年4月から、スマートフォンアプリで残高照会等ができる「しんきんバンキングアプリサービス」の提供を開始しました。9月からは、キャッシュレス決済サービス「オリガミペイ」によるQRコード決済機能を追加する予定で、今後とも機能の充実を図っていきます。

 キャッシュレス化対応については、当金庫の事業者向けキャッシュレス化を支援するため、18年12月にオリガミペイと提携し、事業者への加盟店登録の紹介を開始しました。当金庫の事業者が、加盟店登録すると消費者がオリガミペイのQRコード決済を希望した時に対応できるようになりますが、過大な設備投資は必要ありません。また、アリペイや銀聯QRでの決済にも対応しているのでインバウンド対策としても有効です。
 今年8月から、オリガミペイと当金庫預金口座との連携も開始しました。連携により、オリガミペイのユーザーが当金庫の預金口座を決済口座として登録することが可能となりました。今後も、状況に応じて連携サービスの拡大を検討します。

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