ーー信託業務を強化する狙いは何ですか。

 遠藤 現在、信託ノウハウ習得のため、りそな銀行に職員5人をトレーニングのため派遣しています。今後、金融機関の仕事の中で機械などに置き換わらない業務は、遺言信託や資産承継信託などの相談業務になると思います。お客さまに貢献するためにもこの分野で力を発揮していく考えです。近いうちに本支店全23店舗で、信託関連の業務ができるように標準装備したい。

 ーー信金のビジネスモデルは変革期を迎えています。どう対応していきますか。

 遠藤 お客さまに選ばれるには古いバンキングを脱皮しないといけない。古い殻が魅力を失い、価値を失っていることははっきりしています。変革は待ったなしですから、当金庫では職員の出向などで他の組織を経験することを奨励しています。そうした“他流試合”によって自分の実力を知り、当金庫を客観的に見られるようになって、意見も出せるようになるからです。

 私たちの本拠地である根室や釧路では、本当の競争の厳しさや都会の価値観も実感としてわからない。激戦地や首都圏で仕事を経験すると、プロの知識を持っていないと通用しないことなど様々な経験を積めます。そんな経験をした職員たちは、財産を背負って地元に帰ってきます。自分たちの修正余地を早く見つけ果敢な挑戦を恐れないようになれば良いと思っています。

 結局、金融機関の仕事は、人への理解が一番です。取引先企業を応援する最大の見極めポイントは、経営者そのもの。私は、経営者6割、事業分野3割、残り1割が財務諸表だと思っています。ものの考え方は面談などで普段から聞き取っていると、何のために商売しているのか、どういう志で商売をしているのか、そしてその志を社内にどのように浸透させようとしているのか、また課題をどう克服しようとしているのかーーこれらについて決算書を見るよりも経営者を見る方が確かです。

 ーー地域活性化を目指した産官学金の連携組織『KONSEN魅力創造ネットワーク』の活動状況はいかがですか。

 遠藤 設立7年目でさらにバージョンアップしています。食の発信だけではなくアドベンチャーツーリズムのプロ人材も昨年6月から入ってもらいました。ツーリズムの人材が加わることで、食の生産者たちが美味しい食材を作ったという表現だけではなく、食材が生まれた背景や根室、釧路地域の特徴、自然、歴史・文化などストーリーの表現にも磨きがかかります。ツーリズム分野の皆さんは、映像コンテンツやプロガイドとしての説明スキルも持っているので、そうした力を融合すればさらにパワーアップできます。



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