(金融機関の役割を話す笹原晶博頭取)
――ところで、東京証券取引所と提携しましたが、どういう狙いがありますか。
笹原 以前から当行の職員を東証に短期研修に派遣するなど繋がりがありました。「どさんこファンド」は私が担当役員の時に立ち上げたものですが、その時も東証と上場セミナーを開催していますが、こうした関係が少し途切れていました。札幌証券取引所と当行は連携して取り組んでいますが、今回東証にも入っていただき一緒にやろうというスキームです。東証と一緒になってセミナーを開催するほか、実際に上場を検討している企業にはコンサルタントを紹介するなどします。より連携がとりやすくなるということと、より具体的な情報や実例、効果を発信できるようになります。
――上場可能な企業が道内には多いと思いますが、そうした企業の後押しになれば良いですね。
笹原 企業の考え方にもよりますが、私たちが応援させていただいた鶏卵、肉食品の製造販売企業(本社・札幌市白石区)や自動ドア装置の販売、施工、保守サービス企業(同・同市中央区)は、言わば成熟産業の企業で既に一定のマーケットシェアを確保しています。それらの会社が、次のステップアップのために上場というスキルを使った訳です。単に知名度を上げるということではなく、優秀な人材の採用、M&Aも仕掛けるとなれば上場は非常に大きな武器になります。この2社が、上場を選択したのは、非常に良いことだと思います。成功事例が積み上がっていくと、上場を目指す人も多くなるでしょう。
北海道の強みの一つは、食材の豊富さ。その強みを活かしたのが菓子メーカーだと思います。強力な菓子メーカーがこれだけ揃っている地域はありません。そんな強みを持つ企業が上場する局面が出てくると、札証も面白いポジションになると思います。札証でなければその株が買えないということになれば、札証も活性化します。
――リテール分野の強化については、銀行・保険・証券の一体化拠点を本店の隣にある新大通ビルディングに開設しました。
笹原 今年の1月にほくほくTT証券を立ち上げて順調に推移していますが、私たちのグループとして証券会社を持ち、これまで提供できなかった商品を一貫してノンストップで提供できるようになったのは良かったと思います。
今回、本店の隣のビルにほくほくTT証券と私たちの住宅ローンプラザ、保険プラザを併設しました。特に住宅ローンと保険は親和性があります。大きな借り入れをしますから、その時に既存の保険を見直すことが多いからです。もう一つは、ローンを借りて返済する人たちでもありますが、将来に向かって資産を形成する人でもあります。そういった方たちは、今まで証券会社とあまり接点がなかったかもしれませんが、一体的に運営することで利便性をご理解いただけると思います。
――コンサルティングプラザは、現在何ヵ所ありますか。
笹原 今は1ヵ所です。これからは地域の主要都市に展開したい。札幌市内はここ1ヵ所で対応できると思います。せっかく作った証券会社ですから、主要な店舗と併設させワンストップで取り組めるようにするのが良いと思っています。1年以内に旭川市に拠点を設けたいですね。
――地方創生に関して具体的にどう動いていますか。
笹原 地方創生は、端的に言えば地域の産業や地域を支える企業が元気でいられることです。地方の課題は様々ですから、その地域に合ったお手伝いができるかどうかが鍵です。
遠別町で取り組んだことは他の自治体にも横展開が可能なものでしょう。遠別町には、若い人たちが住むようなアパートがありませんでした。地元の方もアパート投資をしませんから、町としては地元でなくても投資をしてくれる人を探すことが強い要望でした。それなら私どもが投資家を探しましょうと。その際、投資しやすい環境を町として考えていただきたいとお願いしました。町がインセンティブを設けたことで町外からアパート投資を呼び込むことができました。
実はこの問題はどこの自治体でも抱えています。今回の例は良いモデルになると思います。