IMG_8301(インタビューに答える笹原晶博頭取)

 ――具体的な取り組み例はありますか。

 笹原 例えば先ほど水産加工の話がありましたが、まさしく北海道の水産加工品は競争力がある。でも例えばブリの話をすると、獲れても加工方法が道内では確立されていない。ブリは高級品で、鮮度が良いうちに加工して北海道産として流通させれば、新たな商品、新たなブランドになります。それに着眼する人もいるので、しっかりサポートしたい。

 また、卸のように獲ったものを1次加工にして本州に出していては、付加価値が高まらないし売価に反映しません。商品的に魅力があれば、例えば直販も可能です。観光客を相手にする商売ではなく、地元の人が家庭の味として欲しがる商品まで価値を高めていけば、直売でしっかりと価格を取ることができるでしょう。それをベースにネットで展開するなど、事業モデルをどんどん変えていこうという企業があれば私たちは応援します。

 福島町の例も参考になります。昆布を育てるためには、間引きをする作業が必要。間引いた若芽は、栄養価もあってまだ使えますが、商品にはならず捨てていたそうです。しかし、これには商品価値がある。北海道に進出している本州の大手食品加工会社は、今まで利用されていない道産食材を使って商品価値を高める素材を探しています。福島町で捨てていた昆布の若芽を紹介すると、『ぜひその食材を使わせてほしい』ということで、福島町に合弁会社を立ち上げて地域の人たちと事業化を進めることになりました。一つひとつは小さいですが、このように新たな付加価値をつけることをお手伝いしていきたい。

 また、インバウンドが増えていますが、適切なサービスやプロモーションができているのかという問題意識から、観光に関連した商談会「北海道銀行インバウンドプロダクツ2017」も開催しました。通訳システムやインバウンド向けホームページの作成などで差別化して付加価値を上げ、しっかり価格が取れるように結びつけていこうという催しです。

 ――ファンドの活用という面では如何ですか。

 笹原 私たちは2004年にベンチャーファンド「どさんこ1号ファンド」を立ち上げました。06年に2号、14年に3号を立ち上げ、15年には「ほっかいどう地方創生ファンド」と名付け、私どもだけではなく14信金、3信組にも出資してもらいました。これらのファンドを通して62社、金額にして22億円を投資しています。
 そのうち5社が上場しており、この分野では、かなり先駆的にやってきた思いがあります。4号目のファンドは現在7社、約2億8000万を出資していますが、信金、信組にも投資検討委員会に入ってもらい投資先を一緒に選んでいます。そこで培われた目利きなどのノウハウを信金、信組の地元でも使ってもらいたいからです。

 ――22億円というのはかなりの額ですね。

 笹原 北洋銀行さんのイノベーションファンドが良く知られていますが、実は私たちのほうが上場したケースが5件もありますから実績があります。北洋銀行さんは、「お金は出すけど口は出さない」出資ですが、私たちは株主として関わる方向。北海道ベンチャーキャピタルと組んで運営しており、同社がハンズオンとして役員を派遣するなど経営にしっかりと関わって上場を目指そうということです。



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