IMG_8256(北海道拓殖銀行の破綻から20年、教訓について話す笹原晶博頭取)
 ――いろんな地域のニーズを汲み上げて、マッチングさせるのは銀行本来の繋ぐ力ですが、ニーズを汲み上げる力はどう強化していますか。

 笹原 現場の支店長がまずは最大のアンテナでなければいけない。どういう課題にどういう解決のアプローチがあるかについて、それぞれの支店長がすべて対応できるわけではない。支店長のアンテナに引っかかった情報をさらに俯瞰的に判断するために地区担当役員がいて、彼らが10店舗ぐらいを束ねています。彼らの高いアンテナで支店長から吸い集めた情報を本部に繋ぎ、組織全体で解決する方法を見つけ出すことにしています。これはかなり活発にやっていますよ。

 一方でこういう時代環境の中で、働き改革も避けられず、我々自身の生産性も高めていかなければいけない。中長期的な視点に立った活動もしっかりしていくことが、将来の財産になるという動機付けもしなければならない。

 ――ところで、北方四島についてロシアとの共同経済活動についての意見を聞かせてください。

 笹原 北方四島についてここまで進展したことが画期的だと思います。ここから先のハードルはかなり高い。互いの法をおかさない形で活動のルールを定めるのは困難が伴いますが、何とか形になればと思います。当行には大きな期待もいただいていますので、今までロシアと様々な活動をしてきた中で培われたノウハウを活かし、お手伝いできることがあれば一生懸命やりたい。

 ――最後に触れておきたいのは、北海道拓殖銀行の破綻についてです。今年で20年になりますが、頭取の現在の受け止め方や教訓についてお聞きしたい。

 笹原 金融危機の中で不良債権を大きく膨らませていったのが当時の金融機関で、拓銀も当行も過大なリスクを抱えていました。結果として拓銀は破綻してしまいましたが、当行は、地元の企業・団体の皆さまの応援があって何とか生き残ることができました。

 この20年間でリーマンショックがあり、我々にとっての最大のテーマであるマイナス金利という過酷な状況もあって、常に時代は変化していきます。(拓銀破綻の)教訓は、地域を支える社会的使命を持った金融機関は、過大なリスクを取り過ぎて立ち行かなくなることは絶対に避けなければいけないということ。自らの取り得るリスクの中で、どれだけ積極的な営業ができるか、リスクをコントロールした経営ができるかが常に問われます。

 地域や産業界、経済界が全体としてダイナミズム(活力)を持つことが大切で、金融機関がその旗振り役であってはいけないと思う。私の持論は、銀行は支える側であるべきということ。私たちが持っているネットワークを提供して一緒にビジネスモデルを吟味して、リスクも互いに共有して応援するということが使命なのではないか。
 バブル崩壊後、金融安定化は実現しており、次の展開が必要な時期です。しかし、マイナス金利という環境の中で、金融機関のベースとなる収益基盤は大きく変化して難しい局面に入っています。金融機関は、どういう選択をするのか。縮小均衡策を取るという考え方もあるかもしれません。そうではなく、限られた取るべきリスク、可能な取るべきリスクの範囲内で、新たな分野への展開を目指すことも金融機関の選択肢だと思う。もちろん道銀は後者を目指していきます。

 ――本日はありがとうございました。
(※2017年10月23日記事一部修正)



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