22日の総選挙で自民・公明勢力が圧勝し、当面の経済政策に大きな変化はない模様だ。日本経済の成長に沿って北海道の経済も緩やかな回復が続いている。この景気局面を活かして、北海道の構造問題とされている付加価値拡大の芽を如何に見つけ出し、育てていくかが少子高齢化が進む道内にとって不可欠な経済、社会問題。その中で金融機関は「旗振り役ではなく支える役割」と強調するのが北海道銀行の笹原晶博頭取(60)。金融機関の役割と道銀の取り組みを聞いた。IMG_8273(写真は、道銀笹原晶博頭取)

 ――最初に頭取の景況感をお聞かせください。各種の統計では「緩やかな回復」が続いていますが……。
 
 笹原 なかなか実感しづらいですが、基本的には数字の通りだと思います。すべての産業や企業業績が良いことはあり得ず凹凸は当然あるにしても、全体感はまずまずで決して悪くない。かといって高揚感が出るような状況ではありません。公共工事関係は万遍なく仕事がある状況で各地に行き渡っているので、景気の底上げに寄与しています。
 残念ながら厳しいのは、水産関係。全道を回っても、どこも不漁で魚価が高く、水産加工関係は大変苦労されている。しかも、単年度の話ではなく2年、3年と続いており非常に厳しい。

 ――緩やかな回復のリード役はやはり観光ですか。

 笹原 観光が間違いなく牽引しています。引き続き牽引力は強く、投資もホテルのみならず運輸・運送関係、商業施設も含めて結構なボリュームがあります。

 ――個人消費は百貨店が堅調ですが、スーパーは厳しい。

 笹原 緩やかな景気の回復が実感しづらいのは、特に小売関係。しかし、今の統計ではネット消費がどこまで反映されているのかはっきりしない。リアルとネットはどういう構造変化が起きているのかを見定めないと、なかなか捉え方が難しい。

 ――戦後2番目の「いざなき景気」を超えた景気拡大ですが、北海道には課題が山積しています。

 笹原 北海道は以前から域際収支を改善するために、付加価値をつけて移輸出を増やすことが課題とされてきました。外のマネー獲得に向けての構造変化は、始まったばかり。緩やかな景気回復という状況の中に安堵することなく、本来の構造変化に向かってどれだけ努力するかが、その先を決することになると思います。将来に向けてやるべきことはたくさんあります。
 先に開催された「NoMaps」のような動きもまさにそうで、将来のビジネスモデルの芽をどれだけ後押しできるかが将来に繋がると思います。

 ――金融機関にとって“稼ぐ力”の回復が急務です。
 
 笹原 銀行はマイナス金利が経営を左右する状況ですから、この金利環境が少しでも改善されないと正常な姿に戻らない。当局は、「ビジネスモデルを変えろ」と言いますが、ベースはやはり預金と貸し出しと手数料などの役務取引収入ですから、根源的な預金、貸し出しでどれだけ安定的な利ざやが確保できるかが銀行の根幹であることに変わりはない。

 今の金利が正常だとはとても思えない。金利水準の正常化が、我々の経営にとっては非常に重要。そうなる可能性は高いとは言えない状況ですから、どういう手が打てるか。限られた手であったとしてもそこに注力することが問われています。
 一方で私たちは地域金融機関ですから、地域の経済力がまさしく我々のビジネスに直結しています。少子高齢化が進む道内にあって、産業基盤や経済力を維持していくことが、我々のビジネスを維持することに繋がる。いかに縁の下の力持ちとしてサポートしていけるかが非常に重要だと思っています。

 ――市場が縮小していく中で生産性を上げていくことは不可欠ですし、成長産業を見つけていくのも一筋縄ではない。
 
 笹原 成長産業を見つけることも大切ですが、今、強みを持っている産業を強化していくことがもっと大切。ブランドもあって、価値を引き出してくれるお客さまがいるのに、安売りをしてないかということです。もっと稼げる形にできないのか、もっとお金をいただける状態にできないのかも検証すべきです。



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