札幌発祥の焼きたてパンブランド「HOKUO」(北欧)がその灯を消す。全国で唯一残っていた「HOKUOアピア店」(札幌市中央区)が3月22日(火)に営業を終了、1980年から紆余曲折を経ながらも続いたブランドが42年で閉じる。(写真は、3月22日で閉店する「HOKUOアピア店」)

「HOKUO」を展開する旧北欧は、焼きたてパンのチェーン展開を先駆的に進めた札幌のパン製造販売会社。バブル期には「パンの博物館」(札幌市西区)を開館するなど積極拡大。それが裏目となり経営が行き詰まり、事実上の倒産に追い込まれた。その後、創業者の子息が「HOKUO」を継承、北欧STプラン(本社・札幌市西区)を2010年に立ち上げて、店舗を縮小しながら「HOKUO」のブランドを展開してきた。

 しかし、承継時に前経営者の負債を一部背負いこんでスタートしたため、経営は順調には進まなかった。出店先の家賃負担などが響き、札幌市内に4店舗あった店舗は、徐々に閉店。2020年5月に「JR手稲店」を閉店してからは、「アピア店」1店舗の運営になっていた。

 前経営者時代の1988年には小田急電鉄グループと提携、小田急電鉄は「北欧トーキョー」(本社・神奈川県座間市)を設立して小田急電鉄の駅ナカに「HOKUO」の店舗を展開。一時は80店舗ほどあったが、こちらも環境変化もあって39店舗に減少。そして今年2月28日には全店舗を閉店、一部を「ドンク」に切り替え、「HOKUO」は関東から姿を消していた。

 全国で唯一残っていた「HOKUO」の店舗も、3月22日で姿を消すが、その理由ついて北欧STプランの斎藤豪社長は、「契約期間の満了に伴うものだが、一度閉店することで経営体制を見直した上で再開も考えたい。ただ、ブランド名に『HOKUO』を使うかどうかは決めていない。長年のファンの方も多いので閉店は大変心苦しい」と話した。

 閉店を知った人たちからは、「安くてボリュームがあっておいしいパンが食べられなくなるのは寂しい」(60代女性)、「クリスマスイブには店舗前で一生懸命にケーキも売っていたのが懐かしい」(40代女性)、「祖母と食べた思い出の味が味わえなくなるのは、残念」(同)などの声が上がった。誕生から42年、市民に浸透していたブランドは姿を消す。再興を望む声が湧き上がることを望みたい。



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