公益社団法人北海道観光振興機構(事務局・札幌市中央区)は6月27日、通常総会を開き、新会長に小金澤健司氏(62)を選出した。小金澤氏はコールセンターのアイティ・コミュニケーションズ(本社・札幌市中央区)創業者で現在は会長を務める。これまで、経済界や学識経験者などが会長を務めてきたが、小金澤氏は経済界や観光業界には名前の知られていない無名の新人といったところ。同日に行われた記者会見での発言を紹介する。(写真は、記者会見する小金澤健司・北海道観光振興機構会長)
〈こがねざわ・けんじ〉1960年5月生まれ、愛知県名古屋市出身。名古屋芸術大学中退。2000年5月札幌でアイティ・コミュニケーションズ設立、2008年12月北海道マーケティング総研設立、2014年11月クール北海道設立、2015年8月MILAIイノベーション設立。コールセンター事業立ち上げのため、東京、大阪、札幌、那覇を候補地に選び最終的に札幌での起業を決断。単身、札幌に乗り込んだ。3年後に事業が軌道に乗り家族を札幌に呼び寄せたという苦労人の一面もある。

 ーー会長打診の経緯と選ばれた理由をどう考えているか。

 小金澤 昨年冬頃に小磯修二前会長や役員、会員の皆さまから(会長就任の)要請を受けた。当初は、全く考えられる話ではないと理解していた。北海道観光振興機構の歴代会長は鉄道、電力、銀行の出身者で小磯前会長は大学の学長経験者。経済界、学会の重鎮が会長を務めてきたため、私は、その任にあらずという気持ちだった。しかし、コロナで打撃を受けた北海道観光を一気に再興していくには、従前と違う発想、感覚、運営が必要ということで私に期待していることを強く感じ、葛藤しながらも会長を引き受けることにした。

 ーー本業はコールセンター。観光との関わりは。

 小金澤 私の母体はアイティ・コミュニケーションだが、2000年に設立した時、クライアントは航空業界だった。その業務をするために旅行業登録をして、航空5社の業務も受託した。また観光事業者を含めていろんな観光事業に関してコールセンターは深く関わってきた。その後に設立した北海道マーケティング総研、クール北海道は、北海道の食と観光をプロモーションしていく企業なので、観光業界との関りは深いと思っている。

 ーー知名度不足をどうカバーしていくのか。

 小金澤 私は経済界の重鎮でもないので、皆さんと同じことができるとは思っていない。できることは、22年前に社員ゼロから今の事業(社員数約1500人)を構築してきたことや現在の事業がすべてマーケティングに関わっており、マーケティング戦略に蓄積があること。皆さんが期待されているのは、そのマーケティングの発想だと思っており、そこがまさに私が担うところだと考えている。

 ーー北海道観光の課題と会長として取り組むことは。

 小金澤 コロナ禍で、すべてが観光の課題だと思っている。その中で、観光事業者が期待しているのは、国、行政がいかなる支援を打ち出していくのかだと思うので、効果的な支援をお願いしたいと考えている。併せて、私自身が機構の外から感じていたことにも通じるが、効果的なプロモーションをもっと深掘りしていきたい。例えば、インバウンドのプロモーションであれば、海外の一般市民の方に広く北海道をプロモーションしてもなかなか効果が出ないので、どのようなプロモーションをすれば効果的なのかを検討したい。また、コロナ禍の中で顕著になったのは、国内観光客のリピーターをいかに増やしていくかということ。そういったプロモーションも必要だと思っている。

 また、改革のためのプロジェクトチームを立ち上げたい。機構の組織や事業などをもっと機能的にして、機構が観光業界のために役立つように改革していくための提言をいただく機関を設置したいと考えている。具体的には、機構という広域DMOという位置付けの組織が、どれだけ機能していくのか、自主財源をもっと確保することや優秀な人材をもっと活用することなどを討議したい。改革プロジェクトチームは、内部の人たちで組織すると前例踏襲になったり、内部的な考え方になってしまうと思うので、より活性化させるために外部の客観的な視点で機構の体制や運営にアドバイスいただくことをプロジェクトチームに期待したい。

 ーー改革プロジェクトチームはいつ発足するのか。

 小金澤 早々に発足させたい。人選は私の頭の中にある状態なので、これから機構の役員とも相談しながら決めたい。人数は10人前後で、経済界、行政経験者など幅広く考えている。もちろん観光業界の方にもお願いしたいが、観光業界に偏ることがないように、全く異業種の方にも参画いただきたいと思っている。

 ーー改革案はいつ頃まとめるのか。

 小金澤 改革をしていくには、機構の定款の問題もあるため、そういったことをきちんと踏まえて検討したい。年度内では遅いと思っており、できれば年内に改革案をまとめたい。

 ーー北海道のツーリズムについて具体的に考えていることは。

 小金澤 北海道は世界からブドウの産地として注目されており、ワインは大変有効な観光コンテンツ。現在、北海道には50を超えるワイナリーがあるが、これらのワイナリーが観光客のリピーターにとって大きな要素になると思う。ワインツーリズムは、もっとプロモーションできるのではないか。それ以外にも、食や温泉、森林のほか、優れた医療機関や介護機関、ゴルフ場もある。メディカルやリハビリテーション、スポーツを併せた健康志向を加えることで、私は従前にない言葉だが、ケアツーリズムという定義で誘客促進も行っていきたい。
 それに加えて、最近よく様々な場面で言われているナイトタイムエコノミーにも注力したい。海外では夕食が終わってから夜の観光を楽しむことが定着している。日本の観光地は、夕食が終わったらおしまいという傾向が強かったと思う。夕食後も楽しめるナイトタイムエコノミーを、親子連れや大人たちに向けて力を入れて紹介して取り組んでいきたい。


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