北海道信用金庫(本店・札幌市中央区)が誕生してまもなく2年になる。マイナス金利政策で金融機関の経営環境が厳しい中、初の通期決算となった2019年3月期決算は合併に伴う業務に注力したことから預金、貸出し、利益ともに変則決算だった18年3月期よりも減少した。道内初の預金量1兆円超えの信金として地方創生や地域貢献を通じて地域経済を活性化させる役割が、今まで以上に求められている。北海道信金は進む道筋をどう描いているのか、前田繁利理事長(65)に聞いた。(写真は、インタビューに答える北海道信金・前田繁利理事長)
ーー最初に営業区域の景況感を聞かせてください。
前田 当金庫の営業区域の景況はまずまずと認識しています。道央地区は札幌中心に人の動きが活発で後志地区では新幹線や高速道路の工事、観光入り込みもあって道内の他地域とは少し違う景況だと思います。岩内や泊地域の原発関連の工事業者などには減収傾向がありますが、そうした企業もこれまで十分に内部留保を積んでいるところが多く、極端に厳しくなることはないでしょう。
課題は、建設業などの後継者不足の中でどう事業承継を図っていくかということ。昨年1月、北海道信用金庫が誕生してすぐに後志地区を回りましたが、取引先から事業承継のセミナーを実施してほしいと言われました。札幌地区では毎年開催していますが、今年から倶知安町でも毎年開催することにしました。労働力不足も深刻で当金庫では外国人労働者の採用セミナーも開催するなど、地域の取引先のお役に立てるように努力しています。
ーー地域全体で事業承継のニーズが高いのですね。
前田 中小企業で事業承継の問題を抱えているところは多い。札幌地区や後志地区で実際に事業承継をした企業も増えています。業績が良好な企業には、引き受け手も良い条件を出します。一般的にはその企業の取引先が事業承継先になるケースが多いようです。売り先を決めておいてから承継の専門機関を入れるところが多く、守秘義務を締結して行っていますから外部にはなかなか実態がわかりません。
ーー事業承継が多いのはどの業種ですか。
前田 建設関係ですね。公共工事が中心なのでM&Aが比較的やりやすいのでしょう。
ーーところで、北海道信金として初の通期決算(2019年3月期)をどう分析していますか。
前田 19年3月期は、昨年1月1日の3金庫合併後、北海道信金として1年を通して業務を行った初めての年度でした。各営業店では、北海道信金としての事務手続きの浸透とスキル向上に努めたほか、複数店と取引していただいている融資取引先には近隣店舗への移管・集約の依頼、店舗統廃合への対応など合併に伴う業務に協力してもらいました。
決算内容はマイナス金利政策の影響により預貸金利ザヤが縮小したほか、合併関連費用の償却及び与信コスト発生や廃止店舗の減損処理実施により、純利益は前期実績を下回りました。預金量、融資量も前期よりそれぞれ135億円、116億円減少しました。3金庫の合併に時間を費やして営業推進の号令は、どちらかというとあまりかけてこなかったのが主な原因です。
合併当初、3年以内をめどとしていた7つの出張所の母店への統合は、昨年度内に全て統合完了させました。18年9月18日に「岩内支店高台出張所」を「岩内支店」に統合、「朝里支店新光出張所」を「朝里支店」に統合、19年11月26日には「琴似支店二十四軒出張所」を「琴似支店」へ統合、「豊平支店豊平六条出張所」を「豊平支店」へ統合、「東苗穂支店モエレ出張所」を「東苗穂支店」へ統合、19年2月12日は「小樽支店稲穂出張所」を「小樽支店」へ統合、「手稲支店前田出張所」を「手稲支店」へ統合というように対応しました。
ーー店舗統廃合は取引先には不安を与えかねない面もあります。
前田 旧札信金は03年1月に石狩中央信金と合併した経験があります。その際に取引先が非常に不安感を抱いたことがありました。それで今回は、そういうことがないように事業本部をそれぞれの信金本部があった小樽市と余市町に置き、理事長が事業本部長に就くようにしました。事業本部では、融資の決裁権限も持っており取引先に安心してもらえる体制にしました。