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 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第79回は、札幌市の「琴似屯田歴史館資料室」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第79回 琴似屯田歴史館資料室
-北海道最初の屯田兵村の歴史を伝える-


琴似屯田歴史館資料室(2階にある)

 地下鉄東西線琴似駅1番出口より徒歩約5分のところに、札幌市西区琴似二十四軒まちづくりセンター(旧札幌西消防署琴似出張所)があり、2階に琴似屯田歴史館資料室がある。1995年(平成7年)に開館した。NPO法人札幌郷土文化推進センターが運営している。

 琴似の地名は、アイヌ語で「コツ・ネイ」(窪んだ所)が語源で、1871年(明治4年)に札幌本府周辺の村名として、命名された。

 1874年(明治7年)に、北海道の開拓と北方の警備を目的にした「屯田兵制度」に基づいて発布後、翌年から第一大隊第一中隊として仙台藩亘理領、斗南藩、庄内藩などの士族などが198戸移住。翌9年に3戸、11年に7戸が分家補充された。合計で208戸となった。琴似が屯田兵村の最初の候補地に選ばれた理由は、札幌本府に近く、交通や通信の要衝地であったことによる。そして琴似屯田兵村を、現在の旧国道5号線からJR琴似駅まで北東に600m、南北に幅18.2mの中央道路を通し、その両側200mの区域に建設した。屯田兵本部施設や琴似小学校などの中心施設は南側に集められ、北側には兵屋が建てられた。中隊本部は現在の西区役所付近に、練兵場は琴似神社付近に置かれた。


館内の展示物1:1875年(明治8年)当時の琴似屯田入植の姿(高野錦舟作)

 1906年(明治39年)に琴似村が誕生。1942年(昭和17年)より町になる。1955年(昭和30年)に札幌市に編入され、1972年(昭和47年)に政令指定都市になると同時に札幌市西区となり、琴似町の字(あざ)は無くなった。

 資料室は、琴似屯田兵に関する資料や図書、写真、VHS、DVDの他、18人の歴代琴似村の戸長及び町村長の肖像画や写真が飾られている。展示ケースには、5人の屯田兵関係者と第14代琴似村村長に関するものを、展示している。


館内の展示物2:上の肖像画と写真は歴代琴似町村長、その下は農機具類

 最初の山田貞介コーナーは、戦時名簿(軍人としての履歴書)、土地の権利書、屯田教本(屯田兵関係者が小中学生のために作った教科書)の展示である。次の大熊忠之助コーナーは、屯田兵に関する資料の他に、下兵卒名簿、戸籍の写し、2振の刀などがある。牧野清作コーナーは、昇進時に手渡された任命書や勲章授与に関する書類、さらに実際に使用していたフランス様式をした屯田兵の軍服がある。我孫子倫彦コーナーは、巻物にした屯田奏上記録がある。清野専次郎コーナーは表札、火縄銃、紋付羽織袴の他に、清野家伝来の太刀や古文書などが展示されている。第14代の琴似村村長の清水涼コーナーは、勲記と勲章の展示である。その他に、西南戦争従軍日記の写しや伊達家(仙台藩亘理領のもの)の陣笠、法螺貝、養蚕の時に使っていた糸車等がある。


館内の展示物3:奥の2つの展示物は清野専次郎コーナーの展示

 奥にある展示物は、屯田兵の子孫が寄贈したもので占められている。唐箕、千歯扱き、畝立て、備中鍬、養蚕棚などの農機具をはじめ、樏(かんじき)、箪笥、食卓、時計等の日用品の他に、エゾシカの剥製などがある。

 この他は、予備役編入当時の屯田兵の写真、琴似屯田兵村の古地図、小野派一刀流巻物の目録、琴似兵村五十年記念塔の先端にあった星章がある。さらに、屯田兵屋、琴似神社内旧資料館とブロンズ製の記念塔の二十分の一スケールの模型がある。3つの模型は、元道職員の小笠原建次二級建築士によって制作された。

 軍服の展示ケースの上に、第一大隊第三中隊(新琴似屯田兵村)の初代中隊長になった三澤毅(1844~1891)の軍服姿の写真が飾られている。晩年に彼は、「諸扣帳」と呼ばれる日記を残した。この日記は、琴似屯田兵村の暮らしや文化、風習、農事、軍事、さらに明治期の社会情勢や経済状況等を知ることができる。これは2022年(令和4年)に、北海道屯田倶楽部により『屯田兵日記』として出版された。

 建物の左隣は、『屯田の森』と呼ばれる近隣住民の憩いの場である。その中に、彫刻家奥山義生によって設置されたモニュメント『開拓の鼓動』と、1897年(明治30年)から1999年(平成11年)にかけて制作された5基の琴似屯田関係記念碑が、並列して建っている。

 琴似屯田歴史館は、琴似の財産である「屯田兵」を未来に語り伝えるための「屯田歴史館」の資料館への格上げを目指して、運動を続けている。

利用案内
住  所:〒063-0812 札幌市西区琴似2条7丁目 西区役所分庁舎 琴似二十四軒まちづくりセンター2階
電話番号:011-641-8245
開館時間:10:00~16:00(毎週月・水・金曜日のみ、ただし祝日・お盆・年末年始は除く)
入 館 料:無料
休 館 日:火・木・土・日曜日
アクセス:地下鉄東西線琴似駅下車、1番出口より西区役所方面へ徒歩5分

付近の見どころ
琴似神社
 1875年(明治8年)に、仙台藩亘理領祖伊達成実を祭神として祀るために建てられた。1968年(昭和43年)に、天照大神を特別に神璽する。1994年(平成6年)に、会津藩祖保科正之を合祀。神社内には琴似屯田授産場趾碑、忠魂碑がある。

文・写真:大渕 基樹

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