胆振東部地震による被災とブラックアウトを経験した勇払郡安平町は、2030年度までに公共施設で使う電力を太陽光発電で100%賄う電力の地産地消に取り組む。既に2025年度から進めており、6年間で公共施設の屋上などに太陽光発電施設と蓄電池施設を設置する。事業主体は、町も出資しているあびらエナジー。総事業費は17・1億円。売電目的ではなく、町民の生活基盤を守る「地域インフラとしての太陽光発電」を目指す。
(写真は、安平町で始まった電力の地産地消に関する記者発表後のフォトセッション=ほくほく札幌ビル11階にて)
この事業は、2025年度に環境省の「重点対策加速化事業」に採択された。総事業費のうち7・6億円は交付金を充て、8・39億円は、北海道銀行のグリーンプロジェクト向け融資「ほくほくサステナブルファイナンス(グリーンローン)」を受け、1億強は自己資金で対応する。発電した電力は、平時は役場庁舎など公共施設で使い、災害時は非常用電源として使う。また、あびらエナジーに電力契約を切り替えることで、エネルギー代金の町内循環を実現する。
事業主体はあびらエナジーだが、町が2024年1月に設けた「ゼロカーボン推進協議会」が、実行役を担う。再生可能エネルギーの導入目的や投資計画、太陽光発電施設の設置場所など、事業に関わる事項について可否を決める。協議会会長は及川秀一郎町長で、委員は自治会町や町民などが務め、道銀や北海道電力、北海道大学大学院の山中康裕教授らがアドバイザーに就いている。
あびらエナジーには、発電事業を手掛けるサンヴィレッジ(本社・栃木県足利市)、自治体のゼロカーボン政策の立案などを行っているエイコーエナジオ(同・大阪市中央区)のほか、町も出資した。さらに及川町長が取締役に就任しており、「ゼロカーボン推進協議会の意思決定と事業の一体性が確保され、町民の安心感や信頼性を得られる仕組みになっている」(及川町長)。道内の市町村で太陽光発電への逆風が続いているが、ゼロカーボン推進協議会が太陽光発電事業の一元的な議論の場になっている安平町のケースは、再エネに関する課題解決のモデルケースにもなっている。
この事業に沿って2025年度には安平公民館、遠浅公民館、追分中学校の3ヵ所にアレイ型や垂直型の太陽光パネルを設置しており、2026年度は安平町総合庁舎、追分総合支所、民間企業の所有地と町有地の4ヵ所に太陽光設備を設置する予定。2030年度までに合計24ヵ所(公共施設16ヵ所)に太陽光発電設備、合計22ヵ所(公共施設16ヵ所)に蓄電池設備を設置する。合計発電量は5724kW、蓄電池容量は1740kWh。
2026年4月17日、道銀で行われた会見で、あびらエナジーの北野史人代表取締役は「安平町の取り組みは、単なる発電事業ではなく地域とともに考え、地域のために電力をつくり、地域のために使うもので、今の太陽光発電の逆風に対する一つの回答になる」と話した。及川町長は、「マイクログリッド(地域や施設単位で太陽光などの分散型電源と蓄電池を組み合わせ、電力を地産地消する小さな電力網)も考えに入っており、地域全体でエネルギーを供給し合うことを目指していき、公共施設から個人の住宅などにも将来的に展開していく」と述べた。
会見に同席した安平町ゼロカーボン推進協議会アドバイザーの北大・山中教授は「自分たちのエネルギーは、自分たちでつくり、町を良くするために使っていこうと安平町が第1歩を踏み出すことをうれしく思う。他の市町村でもこうした仕組みを、どんどん取り入れていくべきだ」と語った。今回、道銀が融資手法に使ったグリーンローンは、第三者評価機関の日本格付研究所からJCRグリーンローン総合評価「グリーン1(F)」の最高の総合評価を取得している。道銀では、より扱いやすい融資商品も揃えており、自治体や民間のサステナブル経営をサポートしていく。



































