解体中の建物のシャッターに掲げられた「12月31日閉店」と「感謝の言葉」。紙に書いた手書きのマジックの文字が哀感を漂わせる。古きものが去り、新しきものが生まれる変わり目のようなスポットが札幌・東屯田通にあった。(写真は、解体中の建物に残るシャッターに掲げられた「感謝の言葉」と新たな建物の建築を知らせる表示板)

 札幌市中央区南6条西9丁目から南23条西9丁目までを繋ぐ南北の東屯田通。両側には個性のある商店が並び、現在も商店街を形成している。古き良き札幌の商店街の顔があまり失われずに残っている場所。

 そんな東屯田通のスタート地点に近い南8条西9丁目に解体中の建物がある。薬局が入っていた建物で店舗名は「フタバ薬品」。既に建物は半分ほど解体されており、わずかに木の骨組みと店舗前面のシャッターが残っている程度。そのシャッターに掲げられているのが「12月31日をもちまして閉店いたします」というお知らせと「感謝の言葉」を綴った文章。文章にはこう書かれている。
≪2021年12月31日をもちまして創業90年の幕をおろしました。長きにわたり皆様のご愛顧、心より感謝申し上げます。沢山のお客様との出会い、笑顔に励まされ思い出がいっぱいです。これからも皆様が健やかに平安に満たされます様心からお祈り致します。ありがとうございました≫
 店主の生真面目で温かい人柄が滲み出ている。

 建物の解体完了後、跡地には賃貸住宅と飲食店の複合建物が建設される。敷地面積は約32坪(107・24㎡)、建築面積約25坪(82・56㎡)、鉄筋コンクリート造の地上5階建て、延べ床面積は約123坪(408・10㎡)、建物の高さは15・500m。建築主はライフエフェクト(札幌市中央区)、設計、監理は有限会社エー・トランスデザインワークス(同)、施工はフォレスト(同)。
 90年間続いた薬局が姿を消し、賃貸住宅が新たに建設されるこの一角には、古き流れと新しき流れが入り混じったような気配が漂う。



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