プロバスケットボールチーム「レラカムイ北海道」を率いてきたファンタジア・エンタテインメントは、JBL(日本男子バスケットボールリーグ)から除名処分を受け、チームの無償譲渡も余儀なくされた。水澤佳寿子社長(48)は、北海道にスポーツビジネスを根付かそうとアントレプレナーシップ(起業家精神)を体現してきたが、夢半ばで危機を迎えている。(写真は水澤佳寿子社長)
水澤社長は、何を考え、何を目指そうとしているのか。独白の第2弾。
――水澤社長は、スポーツビジネスは初めて取り組んだ事業ですか。
コンサドーレで1年間取締役をしています。その時に営業利益を出させてもらってチームに貢献できたと思っています。その後、同志社大学のスポーツマネジメントスクールで勉強しました。
――ファンタジア・エンタテインメントの設立から何年目になりますか。
5年です。1年半準備期間があって事業をしていない。会社を作って、従業員も雇ってPRしかやっていない期間があります。この間に、従業員に給料を払ったり、事務所の賃借料を払ったりするわけで、言わば投資なんです。
だから累積赤字の中には入れていない数字だった。それも誤魔化しだと言われていますが、根本的な考え方がメディアには伝わっていなかったと思う。
私は事業をやってからの累積損失は2億3000万円ですと皆さんにお伝えしていました。でも、それまでの間に2億円お金を使っています。PL、BSでいけば確かに乗っかっている赤字なんですが、私にとって見れば投資、経営者としては投資の期間なので、それを一般の皆さんにご説明するときに事業の累積赤字に入れるかどうかの判断だと思う。
今期の本業の儲けを示す営業利益では黒字になっていて、経常利益で500万円程度出る予定だった。同じJBLのリンク栃木ブレックスが(利益を出して)素晴らしいと言っていますが、リンク栃木と同じなんですよ、うちは。
それを、わざわざあからさまに言っていないだけのこと。リンク栃木は、100%親会社があって1億5000万円のお金が下りてくる会社。比較対象が全く違う。
――経営が厳しいことは厳しかった。打開策として中国企業による資本参加があったわけですが、51%となると経営権の放棄ですね。
放棄ではないです。経営権と資本は別だと思うし、あちらは経営をするつもりはなかったわけです。あくまでもあちらは事業としての投資と考えていた。
うちの社名は、ファンタジアでアジアが入っているし、創業の理念が合致する提携だった。
皆さん、中国企業との提携は突飛で、華僑の方が入ってくるのかというイメージかも知れませんけど、経済成長率で最も注目度が高いのは中国。とりわけ北海道は中国、台湾、韓国の観光客は沢山入ってこないと立ち行かなくなる。
うちはもともとファンタスティック・エイジアをスポーツエンタテインメントで作ることを目的にした会社ですから、中国との資本提携はもっと早くしたかったくらいです。
相手先の玄元文化グループは、文化と冠しているようにエンターテインメントを柱にしている。資本の提携だけでなく事業の提携もやることになっていたんですよ。
それをJBLは、全く無視しました。昨年の12月からこの話は進んでいましたが、狼少年のようになると嫌なので言わなかったんです。相手は外資だから、『やっぱり辞めた』と言うことになるかも分からなかったので。
だけど、結局相手を急がせて、JBLの理事会があるまでに合意書を交わしたかったので、北京に飛んで合意書を交わしたうえで理事会に臨んだが、処分の中身は変わらなかった。
――玄元文化グループとの提携は、相乗効果があったというわけですか。
シナジー効果がどれだけ得られる会社と提携するかどうかということで、それがたまたま中国の玄元文化だっただけの話です。バスケットスクールを作って交換留学させようとか、単純に当社のためにお金を入れてくれるスポンサーを連れてきただけではないんです。
玄元文化は、ほかに食品会社を持っていて、その食品を北海道で売りたいと言っていた。スポンサーとしても良いですし、ゲーム会場で玄元文化の食品も販売しようなどと話は進んでいた。
――北海道にとって中国人観光客は倍以上の伸びを示していますし、中国と北海道の関わりは、かなり密接になってくる。
当社との資本・業務提携はまだ壊れたわけではなく、繋がっているんですけど、これ生かせなかったJBLは本当に先見性がなさすぎる。
――玄元文化との提携は今後も生かせれば生かしていくのですか。
どうするのかは、決めていない。これからJBLとの係争になってしまうのに、お金を入れていただくのも申し訳ないと思うし、待っていただいている。
――JBLに損害賠償請求をしてもチームを取り戻すことはしないのですか。
チームと選手の関係は、4月末で契約が切れてしまう。空のチームを奪い取ったり勝ち取ったりしても意味がありません。
――損害賠償の提訴時期はいつごろでしょうか。
3月末にリーグが終わって、新しい引き受け会社が顔を出すころに考えています。
――『新しい引き受け会社』が顔を出すというのは、水澤社長の推測ですか。
しかるべきルートから聞いている話です。名前は教えていただいていない。教えていただいていない理由は多分2つあると思う。ひとつは北海道ではないんじゃないかということ。私はすごく北海道にこだわっていたので、だから教えてくれていないんじゃないかなと。それから、もうひとつは政治色の強い会社と思っているんです。そのどちらかかなと想像している。今は教えられないと12月末に言われた。
――そもそも除名処分の理由になったJBLへの会費未納があったのは事実ですね。
事実は事実ですが、督促は受けたことがないし、何度も相談をしてきた。そもそも他の7チームとうちの圧倒的な違いは、お金がある時期が全く違うということです。
毎年5月に1000万円を納金するんですけど、5月は親会社のあるチームなら年度が変わって予算が下りてくる時期。しかし、うちのチームは5月から9月までゲームがないのに、毎月1000万円以上の選手人件費を負担しなければならないので、一番お金がないとき。
お金がない時期なので『この月に1000万円を払うことはできません』とずっとJBLに言ってきて、『それでは支払い計画を出してください』と言われ支払い計画を出すんですけど、リーグはすごくお金がかかって買わなければいけないものがいっぱいある。そちらへお金を出しているとまた年会費が払えない。
そうこうしている間に、年度が終わって『1000万円出してください』と言われたんで、『前の年の1000万円も相談事項なのにどうしたらいいでしょうか』と相談してきていた。JBLも督促しているという意識がなく、こちらも相談しているから滞納しているとかではなく、支払い方法を検討してもらっているという状況でした。除名処分に該当する規約には、『再三の督促にもかかわらず』と書いているけど、再三の督促は受けていないんですね。
相談案件だったのが、いきなり除名処分になった。だから青天の霹靂。
それから選手人件費が止まったのも確かに事実なんですが、これを決めたのは前任者の近藤洋介社長。私はその場にいなかった。いない中で選手人件費を止めることを決め、いきなり(近藤社長は)辞めたんです。
以下、次回に続く。