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 レラカムイ北海道を率いてきたファンタジア・エンタテインメントの水澤佳寿子社長(48)は、これまでの思いを一気に語った。女性経営者としての自負は、静かな語り口の中にも端々に顔を覗かせる。善玉―悪玉のステレオタイプの論調が目立つ“レラカムイ事件”の真相はどこにあるのか。(写真は、水澤佳寿子社長)


 水澤社長の独白第3弾。
――近藤社長がわずか20日足らずで辞任(昨年12月18日)したのは、知らされていたことと実際の会社の中身が違っていたから、というのが理由でしたね。
 代表権を渡すわけですから、最初から違った会社の中身を教えてもすぐ分かるじゃないですか。全部正しい情報を近藤さんに渡していたのに、『聞いたことのないことがあった』と(近藤さんが)言っているのは、全く何のことをいっているのか私には分からない。
――結局、近藤社長は何故辞めたのですか。
 分からないです。私にすれば、選手に混乱だけ与えて抜けていったような感じです。近藤さんが『君ら(選手たち)の査定をもう一回し直すから報酬は一回止めさせてもらって、月内には査定して払うから』と言ったまま、前の日まで普通に話していて翌日18日に辞めました。
――そもそも、なぜ水澤さんは、近藤さんに代表権を渡したのですか。
 私はこの会社を作った時から5年間で辞めるとずっと言ってきた。メディアにも創業したときからずっと言っている。丁度、経常利益が出そうだったので、ならばバトンタッチできると思ったんですよ。
――支払いの遅延もあったし、資金繰りが厳しい中での交代でした。別の理由もあったのでしょう。
 決算書と資金繰りは別なので、キャッシュフローで言えば昨年10月段階で380万円程度の経常利益が出ていました。
 ただ、11月にはリーグがアジア大会開催で中断する。当社の売り上げはチケット収入とスポンサー収入で、チケット収入が全く入らない時期に、選手の人件費を払わなければならずキャッシュが不足します。
当社はJBLに年会費のほかに入会金を払っていますが、それが基金で積み上げられているので、そこからしばらくお金貸してもらえませんか、とJBLに話をしたんです。
 なぜなら、無理して増資したくなかったからです。12月か1月に玄元文化からの増資というタイミングがあったからです。それで、一時的にJBLにお金を貸してもらえませんかという話をした。ところが11月になっても全くJBLは動かない。
 とうとう11月末に支払いが来てしまうので、JBLがダメだった場合を考えていた中に、相談相手として近藤さんがいたのです。
 11月中旬に、近藤さんから『自分が役員であれば資金調達も可能だけど、僕の友達が、と言っているのでは説得力がない』と言ってきた。
 それでは丁度私も5年間で経営をバトンタッチしたいという思いもあったし、今年は何とか経常利益が出そうでタイミングとしては良いかなという考えがありました。
 そうは言っても今までお金を貸してくださっていた方々は、私の信用もあるので、2人代表制にして5月の決算期に皆さんのご理解が得られるのだったら、私はそこで辞めるということになりました。それで11月29日に臨時株主総会で彼を役員にしました。
――これで、何とか乗り切れると。
 12月19日にリーグから直ちに臨時理事会を開催すると通告がありました。 
 21日に、私から理事会に『お金が用意できたので選手人件費を支払っておこうと思います。12月5日分です』と申し出たところ、吉田専務理事から、『リーグが支援することになればリーグから選手人件費を負担することになるから払わなくてもいい』という回答を得たんです。
 それで払わなかった。
 28日に理事会に呼ばれて質問を3つ受けた。①リーグに年会費を払っていないって本当か、②選手人件費の未納は本当か、③資金不足があるのは本当か――と。全部事実なので本当だと答えました。
③について説明したのは、我々は売り上げが立って初めてその年の資金不足が解消できるので、リーグの7チームのように予算が下りてきてその資金を使っていくカルチャーではないんです、予算を作っていくカルチャーなのですと言いました。
 1月から3月までのドル箱の札幌開催をやっていないので確かに資金不足は3000万円ほどありますが、これからゲームをやれば解消できます、と答えました。
 しかし、5分で退席を求められ、無償譲渡を決議する株主総会を1月11日までに実行しろと要求されました。しかも、『出来なかったら除名だ』と。この間、改善命令など一切の要求はなく、翌日札幌に戻ってきて選手の支払いをします。
――無理難題ですね。
 私は17、18日に北京へ行って玄元文化との提携をして、19日に『一切の問題は亡くなったので除名は免れます』と東京で記者会見しましたが、理事会で除名は変わらなかった。
――ところで、水澤社長がLBLを提訴して以降、ファンタジア社はどうなりますか。
 まだどうするか決めてない。事業はスクール事業などが残っているので、売り上げは10分の1になりましたけど、コストを10分の1にすれば良いので。
――金融債務は、どれくらいですか。
 金融債務は4000万円くらいですね。
――北洋銀行さんですか、それ以外にもありますか。
 (北洋以外)ないです。
――一般債務は。
 1億くらいですね。殆どが買掛金です。
――金融円滑化法で返済猶予が受けられますよね。
 まだ、そこまではしていないが、北洋さんは株主でもあるので状況はご理解していただいて待っていただいている状況だと思います。
――債務を事業で返していくことは難しいですね。
 そうですね。
――会社分割なども考えていますか。
 そこはまだ弁護士とは打ち合わせをしていない。
――提訴するまでにファンタジア社の法的整理にはならないですか。
 そこもちょっとまだ良く分からないです。法的整理をするかどうかも決めていないので。やっていける方法としては皆様が(返済を)待っていただけるかどうかですから。JBLは意図的にスポンサーのところを回って契約解除して残りの金額を請求するようにと働きかけているんですね、今。
 だからうちの会社が潰れることによって、『ほら見なさい、僕らの除名は正当だったでしょ』と言いたいのでしょうが。こんなことがなければ潰れる会社ではなかったわけですから、私は組織ぐるみの乗っ取りだと思っています。
――水澤社長は、このままでは引き下がれないですね。
 自分一人だったら、もういいですという感じです。自分のお金は、1億4000万円くらい使いました。でも、私の他にも62名の株主がいて、中には25万円出してくれた人や1000万円出してくれた人がいます。私が諦めたら『ちょっと待ってよ、何で諦めるのよ』とその人たちはきっと思うでしょうし、それは出来ない。 
債権者というと、対峙している関係のように思われますが当社の債権者は皆横に並んでくれているんですよ。私は
ずっと、『今は我慢してください、10年経ったら、あの時に僕らが支えたからだ、と言ってもらえますから』と付き合ってもらっている人ばかりなんです。諦めたらその人たちを裏切ることになる。それは出来ないし、その人たちはきっと『やれ』と言うと思うんで。
――中国の企業は、宙ぶらりんの状況でいつまで待つかですね。
 3月中には中国にいって状況報告したいと思っています。
――場合によっては提携解消になりますか。
 それはないと思います。玄元文化には食品の事業がありますから。
――現在の率直に気持ちは。
 こちらが反論していないので、私でさえ記事に影響されるのに、周りの仲良くしていた人たちの気持ちもあっち(JBL)に行っているようなところもあって、そこはちょっと淋しいなと思います。
   


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