「北方ジャーナル」2022年9月号が本日15日朝、店頭に並んだ。今月のトップは、元首相銃撃事件でにわかに標的にされたヤジ判決周辺を追ったレポート、「蛮人に自戒を」だ。本誌前号締め切り直後に伝わった、元首相射殺事件。警護の不手際が指摘されることになった出来事は、ほどなく大きな“流れ弾”を生む。3年前に札幌で起きた野次排除事件をめぐる司法判断が、その後の警備の萎縮を招いたとする言説だ。インターネットの匿名投稿から報道大手の社説・解説、地方議員の発言まで、あたかも要人警護と言論・表現の自由は両立しないと言わんばかりの声は、事情を知らない多くの人たちを誤解させた可能性がある。だが本来、警備と言論はいずれも萎縮してはならない筈だ。(画像は、北方ジャーナル9月号の表紙)

 その元首相銃撃事件──選挙応援のため訪れていた奈良県で元首相の安倍晋三氏(67)が銃撃され死亡した惨劇は、列島に大きな衝撃を与えた。安倍氏は北海道とも繋がりが深く、道内関係者からは突然の死を悼む声が続いている。元首相は折に触れて「これからは北海道の時代だ」として道内経済人とも交流を続け、とりわけ若手経営者を育成する目的の「北海道経営未来塾」には強い関心を寄せていた。今回の特集では、首相退任後の昨年7月、同塾で行なった特別講演の内容を紹介するとともに、30年以上に亘り親交のあった長内順一氏(75)、元ホーム企画センター代表の青木雅典氏(87)に元首相との秘話を訊いた。

 本誌の歴史を語るうえで避けて通れないのが、表現の自由の限界について我が国の司法が戦後初の判断を下した「北方ジャーナル事件」だ。今月号の創刊50周年記念特集では、1979年に起きたこの事件にあらためて注目。当時、本誌に対する出版差し止め仮処分申し立てにかかわった上田文雄弁護士(元札幌市長)への特別インタビューをお届けする。人権派として知られる上田弁護士は、この事件をどう振り返り、本誌の現在をどのように評価しているのか。

 新たな被害調査が求められている北海道立高等看護学院のパワーハラスメント問題の続報も要チェック。8月上旬、未だ被害認定に到っていない複数の事案について道が再調査の意向をあきらかにした。遺族が調査を要望してきた在学生の自殺事案では、すでに解散した第三者委員会とは別の調査チーム発足が決定。8年前の不適切指導・退学強要問題では、今月から改めて聴き取り調査が始まることに。埋もれていた事実の解明に光が射し始めたのは、ほかならぬ当事者が声を上げ続けたためだった。

 青森県下北半島にある大間町。マグロ漁で知られる本州最北端のこのまちでは、2008年から世界でも例のないフルМOX燃料専用となる大間原発の建設が行なわれている。その原発建屋からわずか250メートルの場所に用地買収に応じなかった故・熊谷あさ子さんのログハウス「あさこはうす」を記者が訪ねたレポートも目を通してもらいたい1本。大間原発をめぐっては、海を挟んだ函館市が14年に国と事業者を相手取り建設の無期限凍結を求める訴訟を起こしており、本道にとっても無関係ではない。6月下旬、あさ子さんの長女で活動を引き継ぎ「あさこはうす」に暮らす熊谷厚子さん(67)を訪ね、反原発への思いを訊いた。

 そのほか、この春に産声を上げたばかりの地方紙「ネムロニュース」における船出直後の波瀾の続報、「ウマ娘」効果が問題提起した日高地方の観光振興のあり方を探った現地ルポなどもオススメ。本誌でしか読めない道内の事件、話題が詰まった北方ジャーナル8月号のお買い求めは、離島にいる方も都会に住んでいる方もお近くのセイコーマートへ。大手書店、アマゾンなどでも購入可能。北方ジャーナルへの問い合わせや注文などは、右側下にある同誌のバナーをクリック。

※9月号主要コンテンツ
【報道】
■首相批判封殺の波紋〈24〉──元首相銃撃で標的にされるヤジ判決。現職道議は関係者を名指しで批判
■告発・絶望の学府〈17〉──解明なるか、あわや風化の被害。道立看護パワハラで新たな動き
■道警不祥事から考える〈58〉──懲戒・監督措置ともに前年より増加した2022年上半期
■2022参院選・北海道選挙区総括──旧民主党系の連携不足で自民の長谷川・船橋がタブル当選

【ニュース】
■NHK「NW9」密着もお蔵入り ネムロニュースの迷走止まらず
■民事再生のスガイディノスが東京のエンタメ企業GENDAに事業譲渡
■銃所持許可訴訟・二審弁論続く 裁判所が双方に積極主張求める

【緊急特集 故・安倍晋三元首相と北海道】
■安倍元首相が若手経営者たちへ贈ったラストメッセージ──「未来は私たちにかかっている」
■元首相を悼む──北海道経営未来塾塾長 長内順一氏‏‏/青木ビジネス企画センター社長 青木雅典氏

【特別企画】創刊50周年記念特集(4)
▼【寄稿】ジャーナリスト・清水潔‏/元警察官・稲葉圭昭▼【特別インタビュー・北方ジャーナル事件と現在】弁護士・上田文雄「昔のような北方ジャーナルに決して戻らないでもらいたい」

【追悼特集・土屋公三氏が遺したもの】
▼創業50周年メモリアルインタビュー再録▼土屋氏を悼む──日本商工振興会会長 伊藤小一氏/キャリアバンク社長 佐藤良雄氏

【地域経済】
●地域観光の今後(日高路編)──ウマ娘効果が問題提起した馬産地での観光振興の在り方とは

【原発関連】
●青森県大間町の「あさこはうす」を訪ねて──原発に食い込んだ反対の標 母の遺志を継いだ闘い今も
●岩内町の斉藤武一さんが自費出版した絵本で泊原発に潜む地震のリスクを警鐘

【医療】
●札幌ハートセンター初の分院「新札幌心臓血管クリニック」の大川洋平院長に訊く

【文化】
●劇団うみねこ元代表の吉川勝彦さんに訊く【2】「芝居バカの夫を支えた妻 書き残したい小樽演劇史」

【長期連載】
●ルポ「ひきこもり」(84)──NPO法人「楽しいモグラクラブ」が動画で支援者たちをサポート
●“農と食”北の大地から(192)──豊浦発・自然栽培の野菜と卵を宅配する駒井一慶さん


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