酪農学園大学(江別市)は、自然電力(本社・福岡市中央区)と共同で垂直式太陽光発電設備の運用に関する共同実証を行う。2023年12月25日に、同大学敷地内で運転開始のセレモニーが行われた。(写真は、垂直式太陽光発電施設の運転開始セレモニー=酪農学園大提供)

 垂直式太陽光発電設備は、地面を蓋ってしまう傾斜のついた平面型の太陽光設備と違って、パネルを地面に垂直に設置する。パネル間の距離を10m程度離すことによって、その間をトラクターなど農業機械が通ることができるほか、両面にパネルを設置して東西方向に向けると、朝と夕方の2回の発電ピークが得られる。さらに積雪時には、雪の反射光を利用した発電も期待できる。日中に日陰になるスペースが少ないため、畑作や牧草栽培にも影響が少ない。

 自然電力は、この垂直式太陽光発電設備を宮城県東松島市の畑作農家に設置、稲や野菜の生育状況のデータ収集を行ってきたが、今回は、道内で初めて設置し、酪農学園大と共同で積雪量の多い地域での有効性を検証する。

 垂直式太陽光発電施設は、酪農学園大フィールド教育研究センター(以下、フェドレック)作物生産ステーション圃場3番(国道12号沿い)に設置した。太陽光パネル128枚を使い、年間発電量は、初年度約8万5000kW時を想定している。地表からモジュールまでの高さを江別地区の垂直積雪量に対応して1・4mにしたほか、各列の間隔を8mから10mにして4列設置した。

 検証内容は、農作業効率の評価、牧草の生産量に及ぼす影響、牧草圃場での発電評価で、検証期間は1年間。運転開始のセレモニーで、フェドレックの泉賢一センター長は「使わない空間を活用して電力を発生させることができ、購入電力を減らせる。牧草地で冬も収入を得られるのは画期的。商業ベースで導入することも視野に入れて取り組みたい」と話した。
 また、自然電力の瀧口直人執行役員事業企画部部長は、「酪農家のモデルになって、これから導入したいと思ってもらえるようなプロジェクトにしたい」と語った。自然電力は、実証で得られたデータを元に、2024年以降、北海道や東北地方など積雪寒冷地の酪農家向けに、牧草地での自家消費システムとして普及促進を図っていく考え。


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