ーー市が力を入れているソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)についてですが、市長が、保健福祉部長時代から積極的に取り組んできたひきこもり問題についての市の対応と課題は。
大泉 ひきこもりは、言ってみればメンタルのパワーのようなものが、ずっと落ち込んでいる状態だと思います。何年も、あるいは何十年もひきこもりのまま苦しんでいる方もいると思いますが、落ち込んでいるところからメンタルのパワーが上がってくる時に、社会や行政がどう関わっていくかだと思います。もちろん、人それぞれ違いますし、いつまでもそのタイミング来ないと思ったら、ある日、何の兆しもなく、突然来ることもあるでしょう。
ひきこもり対策は、行政だけ、あるいは、民間だけではダメだと思います。いろんなところが関わることが大事です。当事者が、少しパワーが上がってきたなと思う時に、選択肢があることが重要です。行政や社会福祉協議会のひきこもり相談窓口でもいいでしょうし、相談窓口まで行けなくても、例えば当事者会に行ける人がいるかもしれません。
当事者会には、ひきこもりの当事者会もあれば、不登校のお子さんたちの集まりもあります。一番苦しんでいるのは、実は、本人よりも場合によっては、家族の時もあります。そういう場合には、家族会もありますし、その家族会も、例えば、不登校の家族のケースもあれば、発達障害にテーマをあてた当事者の会、家族の会もあります。そこに繋がるだけで回復するケースもあるので、私たち行政も目配りをしながら、協力体制を築くことによって、それぞれの会に活動を続けてもらうとことが大切です。そういう会の存在を知らずに、何十年も悩んでいるケースもあるので、互いに紹介し合えるようなネットワークができるだけでも、かなり変わってくるでしょう。
函館でひきこもりの実態調査を行ったことがありますが、全国の調査や札幌市の調査よりも、非常に(ひきこもりの人が)多いという結果が出たことがありました。このため、行政の予算をつけて、地域包括支援センターに各3人ずつ、自立支援という形でスタートさせました。必要に応じて伴走をしますし、それぞれの特性に応じて、合う場所を紹介して、興味があれば家族の方に行ってもらって、チャンスがあれば、当事者にも参加してもらうような動きができれば一番良いでしょう。
ただ、始まったばかりなので、地域包括支援センターの支援スタッフも手探りで進めています。互いの研修だとか、関係機関との連携を密接にしていくことで、一気に対応が進んでいくと思いますから、ひきこもりを巡る環境は、大きく変わっていくでしょう。
ーー経済施策についてお聞きします。起業のフォローアップなどを含めて、今どんな施策を打たれていますか。
大泉 従来から商工会議所を中心に、さまざまな施策を行ってきました。市も独自に施策を打ってきましたが、市と商工会議所の歯車が、合う時も合わない時もありました。国からの交付金が付いた時に、それに紐付けて、その時その時でさまざまな施策を進めてきましたが、もっと官民がしっかりと歩調を合わせるようなプラットフォームをつくって施策の在り方を最適化するだけで、効果は、間違いなく出てくると思います。
ーー釧路市の「K-Biz」(釧路市ビジネスサポートセンター)のような組織が、参考になるのでは。
大泉 どういう組織がベストなのかは、今検討している段階です。いずれにしても、当市には、理系人材を輩出する公立はこだて未来大学や北海道大学水産学部、函館工業高等専門学校もありますから、非常に優位性を発揮できる地域です。しっかりと取り組んでいきたいと思います。
ーー本日はありがとうございました。